伊達市に見る「地域再生」策について(ETV特集から)
12月16日のNHK教育・ETV特集「こうして町はよみがえった」という番組で、
地域再生策のモデルとして、北海道・伊達市の「移住政策」が取り上げられて
いました。
私の理解した範囲をかいつまんで言うと、この移住政策の内容・効果は以下の
ようなものです。
○伊達市の将来に危機感を抱いた新市長は、「北の湘南」とも言われるこの
まちの特性を活かし、都市部の高齢者を“誘致”する「移住政策」を今後
の市の重要政策とした。
その内容を具体化したものが「ウェルシーランド構想」であり、都会から
やってくる高齢者向けの次の3つ(4つ)のポイントが新たな産業の創出に
結びつくものと考えた。
1)住宅:高齢者向けの住宅を整備する必要から、住宅需要が生れる“はず”
2)交通:高齢者向けに足の確保が必要となるから、交通需要が生れる“はず”
3)健康:医療・福祉のニーズが大きくなり、その面の需要が生れる“はず”
(4)情報提供)
○高齢者を数多く誘致すると、医療・福祉の面での財政負担が拡大するから
やめた方がよいとの意見もあったが、市長は地元経済界などを説得してこの
政策を進めた。
○結果としてうまくいった。上記について言えば、
1)→「安心ハウス」「バリアフリー住宅」などの新たな建設需要の創出
2)→「乗り合いタクシー」などの新たな交通需要の創出
3)→増えた高齢者を目当てに、病院・福祉事業者などが新たにやってきた
となり、その結果として、
・8年間で2,000人の「移住者」があった。
・雇用は、5,000人増えた。
・税収は4%増となった。
・国民健康保険の住民負担は下がった。
(←やってきたのは高齢者ばかりではない)
の他、産業を求めてやってきた若い世代による活性化・世代間の交流・新旧
住民による「地域ネタの掘り起こし」など、様々な面での「地域力の向上」
につながった、というものです。
「現代日本の新たな移住政策」というと非常にロマンチックな感じがしますが、
よく考えるとこの政策、「自治体経営」にとって非常に合理的な政策です。
高齢者を集めるといっても、ターゲットにする高齢者は“移住”が可能な高齢者。
新たな家を手にすることができるのは、同じ高齢者の中でも経済的に余裕のある
高齢者でしょう。
だから、
・住宅への支出
・交通への支出
・医療・福祉への支出
・その他、生活必需目的以外への支出
が活発にできるはずで、このような「大きな支出群」が生れれば、それを求めて
若い世代も集まる、そして、さらに活性化する、といった「好循環」が生れた
のだと考えられます。
また、移住した高齢者にとっても、税金の高い都会にいればせっかく蓄えた資産
も固定資産税などでもっていかれるのですから、有効な使い途が開拓できたことで、
自然環境以外の生きがいも得られることになります。
人口と面積に余裕があり、しかも、恵まれた自然環境という強みをもつ伊達市だから
こそとりうる「(市にとって)求められる住民“層”の獲得作戦」と言えます。
だからこそ、「非常に合理的な自治体経営策」と考えた次第です。
翻って、都会(東京など)はというと、一見「豊な都市」のように見えますが、
生活保護の必要な一人暮らしの高齢者が多いなど、伊達市とは異なる高齢者負担
(伊達市の場合は、それがビジネスにつながっているのですから、負担ではなく
「前向きのニーズ」とでも言うべき)が年々大きくなっています。
自治体の強みを知ることと、それを活かした政策をたてることの必要性について
改めて痛感しました。
参考)伊達市の移住政策関連HP
http://www.city.date.hokkaido.jp/kikakuzaisei/machidukuri/n96bln0000000wdu.html