「豊島区文化政策」についての懸念

先日、豊島区から「豊島区文化政策推進プラン」(素案)が公表されました。
                 ↓
http://www.city.toshima.lg.jp/kusei/publiccomment/publiccomment_bosyu/016676.html


読んで字のごとく、今後の豊島区の文化政策をまとめたものということで、
来年1月20日まで、区民からのパブリックコメントを求めています。


まあ、
 ・何をもって文化とするか?
   *逆に言うと、このプランに載らない「文化活動」は、区からは“文化”
    と評価されない?
 ・「文化⇒創造性」との記載がやたらにあるが、そんなに簡単に創造性が
  生れると考えること自体が“非文化的”では?
など、「そもそも論」の観点から指摘することはいくらでもあるのですが、
この辺は最終的に“見解の相違”となりそうなので、ここでは、このプランの
「明白な危険性」について具体的に指摘します。


1.結局、「豊島区のめざす文化」はハコモノが目当て?
  (上記プランP31)


 P31をご覧いただくと、文化政策の目標の中に、「(2)総合アートセンター
 構想の検討」があります。
 このセンター、従来から豊島区の都市開発事業の中で挙げられてきたもの。
 このセンターができなければ、文化活動はできないものなのでしょうか。
 今だって、豊島区には5つの地域文化創造館やあうるスポット、さらには、
 様々な施設があり、そこでいろいろな活動が行われています。


 「立派な施設」がなければ、「立派な文化活動」は無理と考えているのでしょうか。
 その点から見ても、この文化政策、どこか納得できないものがあります。


 “文化の発信拠点”と言えば聞こえがいいですが、文化の名の下に、余分な施設
 をつくるのは、財政の面でみても妥当とは言えないと考えます。


2.路面電車や東西デッキをつくれば文化活動が進む?
  (上記プランP37・38)


 同じく文化政策の目標とされるものの中に、なんと路面電車と東西デッキの設置
 が挙げられています。
 この2つ、ムダな公共事業の代表として私は何度も指摘し、非常に多くの区民の方
 も同様に考えていると思われます。


 ハコモノ事業・建設事業として挙げると批判が大きいので、今度は表面に
 “文化の化粧”を施そうというのでしょうか。
 「こじつけにしても、飛躍が過ぎる!」と感じるのは私だけではないと思います。


3.文化のために他の施策に回すお金がなくなり、しかも“埋蔵金”が積み上がる?
  (上記プランP53)


  プランの最後の「第8章 計画の実現に向けて」の最初に、「1.文化政策の実施
  に向けた財源の確保」という非常に重要な項目があります。
  ここを読むと、
   

    文化政策は、福祉、環境、教育、まちづくりなど、区民生活全般にかかわる
    将来への投資であることから 〜
    〜 文化を除く分野の予算において、可能な限り事業費の一定額を文化関係
    経費として確保します。この予算を各部局において文化との融合による事業
    に充てるほか、文化振興基金へ積み立てるなど、文化関係事業の財源とします。


  と、あります。
  ここに対しては、大きく2つの問題を指摘できます。


 1)文化のために、他の予算が“堂々と”削られる?


   「文化を除く分野の予算」から「可能な限り事業費の一定額を文化関係経費と
   して確保」しようというのですから、極めて素直に読むと、「他の予算を削って
   文化の費用に回す」ということになるのでしょう。
   

   しかも、上記2(P37・38)より、この「文化」には路面電車や東西デッキ
   も入ることになるので、区がこだわり続けている路面電車・東西デッキ実現の
   財源確保のために、「文化の“錦の御旗”」が使われる恐れがあると言えるの
   ではないでしょうか。


 2)新たな“埋蔵金”の危険性!(←文化振興基金


   「地方自治体の埋蔵金」については、以前このブログでも述べました。
    (http://d.hatena.ne.jp/hino-katsuaki/20091031
   「国の埋蔵金論争」において、特別会計等の
     過剰な積立金
     使途のない余剰金
   を埋蔵金と言うなら、地方自治体で同様の構造にある「お金の枠」は
     基金
     外郭団体の資産
   に当たります。


   さて、上記の記載において、「この予算を〜文化振興基金へ積み立てる」と
   あります。
   「文化を除く分野の予算」から「文化関係経費として確保」し、「文化振興基金
   へ積み立てる」ということですから、この文化振興基金埋蔵金へ“昇格”する
   可能性を大いに秘めていると言えるのではないでしょうか。

   
以上、豊島区の文化政策の現状について、「危険ポイント」を指摘しました。
冒頭で書いた通り、来年1月20日までパブリックコメントの機会がありますので、私の
意見も含め、皆様のご感想ご意見を、どうかご遠慮なく(?)、区に届けていただきたい
と思います。