行政刷新会議の事業仕分け(4)

9日間に渡って行われた事業仕分けの結果は「できるだけ反映させる」とのこと。
ただ、問題はここからなので、これからの予算編成過程を注意深く見守っていきたい
と思います。


この辺も含め、今回の事業仕分けに対する追加コメントです(ひとまず終わり)。


1.“復活要望”の動きへの対応について


  予想通り、仕分け結果に対する反対の動きがあちこちで見られます。
  当たり前のことですが、一つの結果に対して100%の国民が賛成したり反対
  したりするような結果は出せないので、「賛否をめぐって議論する」のは基本的に
  よいことです。


  そこで、この議論(というより、仕分け結果に反対の方の働きかけ)は思い切って
  全て公開してもらいたいものです。
  科学やスポーツ界の関係者がマスコミに向って堂々と話すのは「表立った行為」
  ですが、問題は、水面下で政府や党へ働きかけようという動きです。
  先の仕分けの議論では、反発を受ける覚悟で仕分け人が公開の場で話したのです
  から、仕分け結果に反対する方の動きも全て公表してはどうでしょうか。


  幾つかの地方自治体では、第三者が行政に働きかけを行った内容について、全て
  記録して公開の対象としています。
  このような対応を、政府だけでなく、民主党への働きかけについても是非やって
  ほしいと思います。
  自治体や団体・個人までも含め、「誰が」「いつ」「誰に対して」「何を言ったか」
  が全て明確になるのが望ましいと考えます。


2.「自治体の判断に任せる」とされた事業の扱いについて


  このような結論が出された事業が結構ありました。
  マスコミ等の関心は「来年度でいくら削れるか?」に集中していて、この結論の事業
  はあまり注目されていませんが、「国と地方自治体の関係」を考えた場合、実はこの
  事業をどうするかは、非常に重要な問題です。
  自治体がやるとして、
   ・イニシアチブをとるのは都道府県か、市町村か?
   ・財源のあり方をどうするか?
   ・どこまで自由にやれるか?(全く制限をなくしてよいか)
  など、それこそ「たった1時間で結論が出せない」問題です。


  そこで、来年度予算とは別に、「自治体への事業移管WG」などを設けて、早急に
  議論を開始してもらいたいとい考えます。


  この議論においても、「議論の実質的な中味の充実」を最優先させる意味で、
  議論のメンバーは、知事会や市長会といった形式的な組織にこだわらず、首長経験者
  や自治体職員等、意欲・能力に秀でた“人材”を厳選すべきです。


3.「地方自治体が、仕分け結果に反発している事業」について


  地方自治体から「地方に必要な事業だから、仕分け結果はおかしい!」との声が
  上がっている事業がありますが、本当に全てがそうなのでしょうか。
      

  夕張市を一つの典型と考えてみると、自治体(というより、首長や議会・業界など)
  が「必要だ!」として、国のお金を使いながら、結果として「ムダな公共事業」と
  なってしまったものは数多くあります。
  ですから、今回も、安易に「自治体が必要と言っているから必要だ」とせず、その
  “必要度”を厳しく判断する必要があると考えます。


  たとえば、豊島区でも活用が大いに検討されている「市街地再開発事業」。
  全てがムダとは言いませんが、国の補助金を呼び水にして、自治体の貴重な財源を
  “食い潰す”可能性があるものが各地に意外とあるのではないでしょうか。


  自治体の要求といっても、それは必ずしもその自治体の民意ではなく、首長や
  議会多数派といった“一部の意思”である可能性があります。


  そこで、今回の場合、自治体からの要求については、「自治体の事業の適正さを
  判断する機関」などを設けて、厳格に評価・判断すべきです。
  その際は、首長や議会の声ばかりでなく、「住民意思がどこにあるか?」を是非
  探ってもらいたい。
  豊島区の一部の事業に見られるように、住民意思と区(首長)の意思が明らかに
  乖離していると見られるものもあるので、「本当の必要性」は、首長や議会を
  超えたところに存在する場合も多々あるはずです。
  こうすることで、「ムダな事業」「潜在的にムダな事業」の実施を洗い出して
  ほしいものです。


4.「地方自治体の事業仕分け」への教訓


  教訓というほど大げさでないかもしれませんが、今後の自治体の事業仕分け
  参考になるのではないかと考えた点です。


  
 1)結論のカテゴリーとしての「とりあえず凍結」の必要性


  今回の国の事業仕分けでは「来年度予算への反映」が大命題であったので、通常
  の自治体の事業仕分けでは出てこない「予算計上見送り」という結論がありました。
  「廃止」ではなく、「現状では問題点や改善を検討すべき点等が大いにある。ここで
  全ての点を議論することはできないから、その見直しの結論を得るまでは、
  とりあえず事業実施を見送る」という判断になったと思われます。


  この結論の出し方、通常の地方自治体の事業仕分けでも必要なのではないでしょうか。
  これは以前にも指摘したことがあったのですが、自治体の事業を仕分ける場合、  
  「やる」(「改善してやる」も含め)「やらない」の中間の結論が通常ありません。
  しかし、対象となった事業を検討してみると、
   「ずいぶんおかしな点が多いので、かなり大きな見直しが必要」
   「しかし、即全て“廃止”とは言えない」
   「でも、2〜3年やめてみても(一部だけでも)、そんなに影響はなさそうだ」
  と判断されるものがありました。


  このような場合、「改善して実施」とするのではなく、「とりあえず止めて、
  見直す」という意味で、「予算計上見送り」が妥当と考えます。
  ただ、自治体の場合、今回の国の仕分けと異なり、「予算への反映」が強調されて
  いない場合もあるので、その場合は、「大幅な見直しのため、一時凍結が妥当」
  などといった結論になるかと考えます。


 2)組織のあり方への言及も必要?


  今回は国の広範にわたる事業が対象となったため、重複を見直すなどの視点から、
  「どこでやるのが適当か?」も議論になりました。
  

  自治体の場合、国ほど「でかい図体」ではありませんから、著しい重複はあまり
  ないでしょうが、「どの部門がやるのが最も望ましいか?」というのは結構
  見直しポイントになるはずです。
  時間の制限もありますから(自治体の場合、30分程度)、ここまで突っ込むこと
  ができるかどうかわかりませんが、この辺まで議論ができれば
   「より望ましい仕分けの姿」
  に近づいていくと考えます。



以上が追加のコメントですが、今回の仕分けが非常に多くの国民の関心を集めたことには
正直驚きました。
テレビでも小学生が紹介されていましたが、私が膨張した6日間の中でも、親と一緒にきた
小学生や高校生、大学生がいました。
この調子だと、国の事業仕分けに続いてすぐに事業仕分けを行った自治体は、傍聴者も
多くなって「注目の的」となるでしょう。


“ファッション”と考えられては困りますが、地方自治体への事業仕分けの一層の普及を
改めて願う次第です。