雄勝町(宮城県石巻市)のこと−復興の先に見えるもの

6月9・10の2日間、雄勝町(おがつ、宮城県石巻市)に行ってきました。


雄勝町と言えば、昨年の震災の際、震源地に最も近かったところで、津波の被害を大きく受けたところです。
今回は、「心が喜ぶ働き方を見つけよう」の著者・立花貴(たちばな・たかし)さんの雄勝行きに同行
させていただくという、めったにない機会を得て、立花さんの車で連れて行ってもらいました。


震災後の現地を見るのは初めてで、積み上げられた瓦礫の山や倒れたままの電柱、地震で崩れたままの
家屋、地盤が緩んでなかなか“完治”できない道路など、生々しい現状には、衝撃を受けました。
何回か行ったことのある女川町を高台から見たときには、あまりの変わり様に、正直胸が締め付けられる
思いでした。
また、患者さんたちを守ろうとして、医師・看護士・職員の方々も亡くなった雄勝の病院でお線香を
あげさせてもらった時には、思わず目頭が熱くなりました。


さて、このように、震災後の現状を知るという上で大変意義のある2日間でしたが、それ以上に私に
とって大きかったのは、この雄勝から、震災後の雄勝の復興とともに、「日本の地域のあり方」が、
まだはっきりではありませんが、見えてきたことです。
そういった観点から、何点か考えたことを記しておこうと思います。


1.雄勝は日本の地域活性化のモデルになる!?


   雄勝と立花さんに強い関心をもったのは、立花さんの講演を聴いたのがきっかけです。
   その後、4月に著書を出されましたが、立花さんのめざすものは、「震災からの復興」
   の先にある「地域づくりのモデル」だと思います。
   立花さんが言うように、少子化・高齢化・働く場の減少等、日本の地方が抱えている諸問題
   は震災前から顕在化しており、何もしなければ、日本の多くの地域がどんどん衰退していくだけ。
   震災後にたまたま(?)出会った雄勝に関わることで、日本の地方が抱えるこのような問題に
   対し、“一つの解”を出そうとして活動しているようです。


   その一つが、漁師の会社「オーガッツ」。
   これまで、最初の生産者である漁師から最終消費者に商品が届くまで、“介在者”が非常に
   多かったのですが、これをできだけシンプルにし、利益の面だけでなく、商品開発(どういう
   商品が売れるか)などにも役立てようというもの。
   予約販売ということで先にお金を出してもらう「育ての住人」方式(私もその一人になりました)
   など、様々な新しい“仕掛け”をつくっています。


   この「消費者とつなぐ」という試み、お金を出してもらうだけでなく、収獲までの間に現地に
   来てもらうことで、「観光効果」も見込めます。
   今取り組みの最中のようですが、当然ながらここに魅力的な雄勝の海・山・伝統文化を組み込み、
   宿泊(これも従来のありふれた「ホテル」型でないもの)の要素も揃えることで、雄勝
   「一大交流地域」に生まれ変わっていくのでしょう。


   これらの面に教育・雇用・医療などの「まちの諸要素」が加わって、「雄勝という一つのまちづく
   モデル」が出来上がり、そしてそれが「日本のモデル」になっていく。
   これが、立花さんのビジョンだと思います。   


2.雄勝は、元気のある人間があつまるスポットになる!?
  

   今回私が行った2日間だけでも20人以上の「雄勝以外の人間」が来ていましたが、面白いのは、
   みんな“熱い”人間ばかりです。
   私も含め、来ている人間はみな立花さんの考えや活動に深く動かされ、その結果として来ている
   訳ですから、考えてみれば、これも“当然”なのかもしれません。

   
   「一人の人間に触発され、思い思いに志・エネルギー・夢をもった人間が集まってくる」
   今回私が宿泊させていただいた雄勝の“合宿所”は、そんな場だと感じました。
   来ている中には霞ヶ関の若手も多数いて、5月末から6月末まで、霞が関全省庁の新人研修受入
   をやっているのだそうです。


    「人が集まる場が、地域活性化のアイデアを生み出す場となり、さらにその実践の場と
     なっていく」


   雄勝というまちが、一人の人間を核にして、こんなまちに生まれ変わろうとしているのではないか、
   今回雄勝を訪れての正直な感想です。


以上、とりあえずの雄勝報告ですが、雄勝と立花さんをもっと多くの方に知ってもらいたいと思い、
立花さんにお願いして、このたび東京で講演会を開催することになりました。
(7月23日18時30分〜、池袋の「生活産業プラザ」)
詳細は、近日中にこのブログでも載せますので、ご関心のある方は是非おいでください。


【ご参考】立花さんが日経ビジネスオンラインに記事を書かれています。


  1)まず住民票を移す。そこから始まる漁業と教育と町の再生被災地に入って365日、
    日本の復興を考える
    http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120327/230281/


  2)もっと高く売るために、売り場を自分で作り、顧客を自分で育てるサカナの流通を
    シンプルにして、売る仕組みを変えていく
    http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120330/230412/


  3)心が喜ぶ働き方を探して人生の35カ年計画に自分がやっと追いついてきた
    http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120411/230869/