「学習療法シンポジウム」に参加して

20日パシフィコ横浜で開かれた学習療法シンポジウムに参加してきました。


学習療法は、読み・書き・計算を行うことで脳を活性化し、それによって認知症のリハビリ・
予防を行うという認知症対策の画期的な手法です。
脳トレ」でおなじみの東北大・川島隆太教授らが中心になり、脳科学の観点から、この
手法についての研究が行われ、全国の多数の施設等で改善効果が確認されています。
*厳密に言うと、「学習療法」は認知症のリハビリのことを言い、認知症予防は「脳トレ
 などと呼びます。


私と学習療法の出会いは、9年前に川島教授の講演を聴いたことがきっかけです。
早速川島先生にコンタクトし、翌年には、くもん学習療法センターの力を借りて、自分の住む
豊島区への導入にこぎつけました。
もっとも、当時はこの学習療法など、介護・健康の先進自治体になる潜在力をもっていた豊島区
も、その後のフォローがはかばかしくなく、今は「普通の自治体」になっているのではない
でしょうか?


それはともかく、近年は、昨年の豊島区長選に立候補したこともあり、私にとっては久しぶりに
「学習療法三昧の一日」でした。
多くの新鮮な気づきがあったのは大きな“収穫”と言えます。


1.学習療法は着実に全国に拡がっている!


  以前は、“脳トレ”・“川島効果”(先生、すみません)で注目は集まっていましたが、
  実際に介護現場で取り組むところはそんなに多くはなかったと思います。
  ところが今回は、全国のいくつかの地域の「地域ネットワーク」が紹介されているなど、
  「点が、面になってきた」といことが、実感としてわかりました。


  これはやはり、「手法としての優位性」をより多くの方が理解してきたからだと思います。
  学習療法を行うと、認知症の高齢者の方に効果があることはこれまでもたくさんの事例が
  示していましたが、もう一つの大きな“変化”は、「介護をする側」にあると言われて
  います。
  学習療法では、読み・書き・計算を行う際、対象の高齢者側と、“リードする”側が
  一定の時間を共有します。
  この“共有”の時間が、介護する側に、大きな気づきをもたらすと言われてきました。
  このような、「二重の効果」とでもよぶべきメリットが、多くの方に理解されてきたのでは
  ないでしょうか?


2.自治体のバックアップは大きな“アシスト”になる!


  当たり前ですが、学習療法を「効果的に社会に活かしていく」ためには、自治体の積極的な
  姿勢が必要です。
  写真は、学習療法を健康施策の中に取り入れて“実践”している、新潟県見附市の久住市長
  がお話になっている場面です。
  見附市は、「日本一健康なまち」を本気でめざして様々な“仕掛け”を行っている
  「注目の自治体」です。
  

  単に「健康になりましょう!」との呼びかけを行うだけでなく、日常生活の行動の中から、
  “自然に”健康に向う行動・ライフスタイルを確立できないかという、一歩進んだ
  「健康の都市構造」をめざしている自治体です(⇒スマート・ウェルネス・シティ)。
  これも、首長の問題意識の持ち方・考え方次第なのでしょうか?
  

3.海外が、学習療法に注目している!


  今回のシンポジウムで一番驚きだったのは、“海外展開”の話でした。
  参加者の特典として、ちょっとだけ“予告編”を見せてもらいましたが、米国での成功例
  がドキュメンタリー映画になるそうです。
  

  その他、シンガポールフィンランド政府から“引き合い”がきているととか・・・


  やはり、言語は違っても、「いいものはいい!」なのでしょう。
  学習療法が「日本発のオリジナル・ブランド」になるかどうかはわかりませんが、その
  可能性を改めて感じました。


以上が、今回の主な気づきですが、終わりのセッションで、学習療法の“草分け的存在”である
福岡の永寿園・山崎園長の言葉が印象的でした。
「介護の質」を正当に評価する仕組みの必要性に言及しておられました。


学習療法にこだわる必要はないと思いますが、認知症や身体機能の回復に効果のある具体的な
“ノウハウ”を制度の中でしっかりと位置づける必要があると思います。


膨張する社会保障費をどう削減するかは大きな課題ですが、制度として「給付費を減らす」だけ
では何の解決にもなりません。
学習療法をはじめとした、「介護状態・健康状態に効果を発揮する方法」を普及させて医療・介護
の費用を減らしていくため、「何がよいのか?」を徹底的に見極め、制度の組み込んで普及させて
いく必要があると思います。