今後の豊島区政を考えていく上での「3つの視点」

今年は統一地方選挙であり、豊島区においては、4月24日が区長選と区議選の日(投票日)になります。


これまでは「区議会議員の立場からの、一議員としての提言」を行ってきましたが、今後は立場を変え、
「自分が行政の長の立場に立ったら・・・」という観点で豊島区政を考えていきたいと思います。


まず、私の最も基本的な考えですが、
 「今の豊島区政を根本から変える」
を基本に置きます。
現在の区長である高野氏が今年の区長選への出馬(4期目)を表明しており、このまま高野氏が当選すれば、
「今のままの豊島区政が続く」ことになります。
「これではいけない!」というのが私の基本の立場です。


そこで、「変えるために何をすればよいか?」を3つの視点から考えたいと思います。
3つとは、以下の3点です。
  1.今の豊島区の「ハコモノ計画」(新庁舎・路面電車など)を一から全面的に見直し、
    「区のお金の使い方」を変える!
  2.「まちの駅」で(豊島区内の)地域ごとの活性化をめざす!
  3.公民連携(PPPなど)の手法で、小さな役所と新たな公共の創造をめざす!


1.今の豊島区の「ハコモノ計画」(新庁舎・路面電車など)を一から全面的に見直し、「区のお金の使い方」
  を変える!


  見直す「ハコモノ計画」の大きなものとしては、新庁舎・路面電車があります。


  新庁舎については、確かに昨年12月に条例が可決されましたが、決して“決着”した訳ではありません。
  これまで、このブログ等でも指摘してきた通り、たくさんの問題を抱えたままです。
  あのままの計画で新庁舎を建てることはやめるべきです。
  日出小跡地に建物を建てることそのものをやめるのか、できた建物の用途を変える(この場合は、当然
  「庁舎が入らなくなる」ので、現在の設計は大きく変更になります)のか、どちらがよいかは検討が
  必要ですが、いずれにしても現在の新庁舎計画は“取り止め”が基本です。


  路面電車計画(都電荒川線のことではありません。念のため)も“即、取り止め”の第一候補と言えます。
  この計画、現区長の「大きな夢」なのだそうですが、どこで話を聞いても、「本気でそんなこと考えてるの?」
  とか「まだそんなバカなこと続けてるの?」という“不評”(という段階を通り越していると言えますが)
  ばかりではないでしょうか?


  もちろん、「今のハコモノ計画を全面的に見直す」のですから、これ以外の計画も一旦見直して必要性等を
  再度検証します。
  どの計画のどの部分を見直すべきか、区全体の視点や地域の視点等から、是非ご意見・アドバイスをいただけ
  たらありがたいです。
  場合によっては、昨年の新庁舎問題と同様、「区長選・区議選の争点」として、大いに“世論”に訴えて
  いきます。
  

2.「まちの駅」で(豊島区内の)地域ごとの活性化をめざす!


  「道の駅」ではありません。
  「まちの駅」です。


  詳細は http://www.machinoeki.com に述べられていますが、全国1600強の地域で実践されている
  「地域づくり」の取組みです。
  念のため申し上げておきますが、「駅 → 地域を路面電車で結ぶ」などという“バカな取組み”では
  ありません(豊島区の“路面電車推進派”(?)にとっては残念かもしれませんが・・・)。


  どういうものか?
  非常に大ざっぱにポイントだけを述べると、基本的には、一定の地域内の幾つかの拠点が「まちの駅」を
  名乗ります。
  「拠点」については特に制限がなく、商店や公共施設・公園など、とにかく「人がいる場所」です。
  中には「個人の家」というのもあります(実際、見てきました)。
  ただ、機能面の必須要素として、
   ・トイレと休憩場所を無料で提供する。
   ・その地域の情報提供や道案内をする。
  といった“条件”があり、この条件を満たしたところが「まちの駅」に“昇格”できます。
  そして、この“条件”をもとに、その地域全体が「人が交流する場所」「人が集まる場所」をめざすのが、
  地域における「まちの駅」の取組みと言えます。


  この取組みが始まった平成11年当時、たぶんまだ「新しい公共」などという言葉は使われていなかった
  はずですが、トイレ・休憩場所・案内といった機能を「誰にでも提供する」ことで、自分のもっている
  ものをたとえ少しずつでも、出来る範囲で“公共化”しようという点、今の「新しい公共」のさきがけとも
  言えるのではないでしょうか?


  もし「豊島区でやる」場合、全国の取組み事例を参考に、様々なパターンが考えられます。
  商店・民間の施設等、先ずは「やろう!」と手を挙げたところからどんどん“「まちの駅」化”すればよい
  のでは?
  そして、一定地域の“駅”がネットワークをつくり、一つの“面”をつくる。


  この“面”の核については、民間だけでなく、公共施設も当然候補になります。
  たとえば、現在その役割・機能が不明確な「地域区民ひろば」。
  もう少し公共施設としての機能を整理した上で、「まちの駅=地域の交流拠点」として“再生”する。
  たぶん立派に“生まれ変わる”ことでしょう。
  もちろん、今の時点でも「そんなの、自分のところの○○区民広場ではやってるぞ!」というところがあれば、
  他の区民広場のお手本になっていただければよい。


  そして、この各地にできた「まちの駅」の幾つかに行政サービスの提供機能を付加していけば、見直すべき
  「ハコモノ計画」の代表格である新庁舎も、今の計画のような大きなスペースは不要になるはずです。
  今の新庁舎計画では「人がたくさんやってくることに対応して、広いスペースが必要だ!」としているの
  ですから、地域の「まちの駅」で行政関連の用が済めば、わざわざ庁舎に行かなくてもよくなり、結果と
  して「新しくつくる庁舎はコンパクトなもので済む」となります。
   *今進められている、「コンビニで住民票の発行をしてもらえる」なども、当然この中に組み込みます。
  

  大体、住民にとって便利なのは、
   「大きな庁舎をつくって、そこに来てもらう」
  ではなく、
   「わざわざ庁舎まで行かなくても、身近な所で用が足せる」
  なのですから、新庁舎計画を含む今の豊島区の考え方は根本がおかしいのでは?
   *現に韓国のソウル市・江南区役所でIT化の説明を受けたときは、担当者はそのような説明をして
    いました。
    「IT化で自宅のパソコンからでも住民票等がとれるようになる。そうすると、役所に来るまでに
     かかる交通費の○○円、時間に換算したコストが○○円で、1回当たり○○円の効果が出る。
     年間利用者数を考えると、合計『○○円 × ○○人 = ○○円」の効果になる」
    といった具合で。


  ということで、この「まちの駅」、視点1の「ハコモノ計画の見直し」にも効果を発揮するはずです。


  また、「地域ごとの活性化」については、上述したように、地域ごとに「交流の場」「集まる場」を
  つくるのですから、当然「地域ごとの活性化」と言えるのですが、もう一つ、今の区長がめざす
    「池袋を中心に、区が主導して(=お金を出して)ハコモノをつくり(新庁舎・路面電車など)、
     外から人を呼び込んで活性化をめざす」
  という考え方と対極的な考えと言えるので、区の中心施策の大きな方向転換という点からも、
  「『池袋中心』から『地域ごと』へ」と言えます。


  さて、ここで「活性化」という言葉に改めて触れておきたいと思います。
  活性化と聞くと、何か無条件に「よいものでは?」みたいなイメージがあるのですが、この中味は何で
  しょうか?
  漠然としたイメージながら、一般には、
   「わんさか人が集まって、モノがどんどん売れるようになる」
  といったようなものでは?


  しかし、今の日本で、このような現象を無邪気に期待できるものなのでしょうか?
  確かに、イベントや新しい商業施設等によって一時的に「わんさか人が集まる」ことはあり得るでしょう。
  しかし、永続的に「わんさか人が集まる」ことは難しいのでは(無理をして、お金をじゃんじゃん注ぎ込み
  続けることができれば別かもしれませんが)?


  そしてこれは、「地域間格差の中での“勝ち組”」とされる東京についてもあてはまることです。
  昨年話題になった「デフレの正体」(藻谷浩介氏)でも指摘しているように、実は東京においても、
  現役世代(=お金を稼ぐ世代・活発に消費する世代)の減少と高齢者層の増加がもの凄いスピードで進んでいる
  のが“現実”です。
  こういった“現実”を冷静に考えてみれば、「東京だけは大丈夫!そのうち、わんさか人が集まるぞ!」と無邪気
  に考えることはできないと思います。


  大体、「一時的な活性化」にしても、隣り合う「A市」「B町」「C市」が同時に達成することはない以上、
  日本全国の多くの自治体が同じ活性化モデルを念頭に“走る”のは非常に危険なことだと言えます(活性化
  のために税金を使うのですから)。


  そう考えてくると、これからの日本に合わせた新しい「活性化」の考え方が必要になるのではないでしょうか?
  新しい「活性化」の考え方とは何か?
  上記の「まちの駅」の取組みとあわせて考えると、
   「地域に住む人間が、地域に親しみを感じて、地域の中でより多くの時間を過ごし、地域の中でお金を
    使うようになる。そうすることで、地域のコミュニティーが醸成され、地域経済が着実に回っていく」
  このような考え方を基本に置くべきではないでしょうか?

 
  もちろん私は、各地で進められている「地域起こしの取組み」を否定するつもりはありませんし、
  「人口減少だから、何をしてもだめだ」と諦めているわけでもありません。
  地域起こしを目的としたイベントや商品開発は大切なことですが、私が考えるような活性化を基本に
  せずにそれのみを追求していくと、結果として、期待はずれや上滑りに終わってしまう恐れがある
  のではないでしょうか?


  この点は「非常に深いテーマ」なので、豊島区での「まちの駅」の取組みを進めるとともに、深く考えて
  いきたいと思います。


3.公民連携(PPPなど)の手法で、小さな役所と新たな公共の創造をめざす!


  PPPは、「Public Private Partnership」の略で、役所と民間が“うまく”連携することで、
  公共的な仕事を“うまく”やっていく、といった考え方です。


  「役所の仕事を民間に任せる」というと、コスト削減や民間企業への丸投げといったイメージで
  捉える方がいらっしゃいますが、決してそうではありません。
  それだけを目的にしたものを「悪い民営化」とすれば、ここで言う「公民連携」は、公共サービスを
  受ける住民にメリットが生じるような「良い民営化」とでも言うべきものです。
  *厳密に言えば、行政が完全に手を離すケースのみを「民営化」と言いますが、ここでは「役所が
   関わりながらも、民間企業等にも仕事を任せる」場合も含めて「民営化」とします。一般にはそ
   のようにイメージされているので。


  「公共のあり方とは何か?」を考えるとき、一般的に、我々は2つの矛盾したものを望みます。
   ・公共サービスは、できるだけ広い範囲にわたり、しかも、質が高い方がよい 
                          → 大きな役所・大きな負担(に結びつく)
   ・公共サービスに対して支払うコストは安い方がよい 
                          → 小さな負担・小さな役所(に結びつく)
  この一見矛盾した。ものを両立させようというのが、PPPという新しい考え方になります。


  矛盾したものを両立させる以上、役所の側(Public)にも民間の側(Private)にも
  「最高の知恵と工夫」が求められます。
  民間側については、国内だけでなく国外も含めた最新事例を通じて、最適な相手の選択をめざします
  (Partnership)。
  また、役所の側については、最高の知恵と工夫を発揮できるような組織のあり方と人材登用を追求して
  いきます。
  

  なお、こう書くと、「民間の側」として企業ばかりを想定しているように思われるかもしれませんが、
  決してそうではありません。
  視点2の「まちの駅」もその中に入ります。
  どれだけの公共サービスを「まちの駅」の中に取り込んでいけるかが今後の検討課題ですが、
  「まちの駅」が、役所との関係においても「公共の担い手」として明確に位置づけられたとき、
   「そこに住む住民が、自身が必要とする行政サービスのあり方について、主体的に関わる」
  という、これまでの豊島区にない新しい体制・関係が生れてくるものと考えます。


以上、この3つの視点、タイトルの表現からは別々のようでも、深いところで密接に結びついた考え方です。