豊島区の新庁舎計画−問題点のまとめ(5)

新庁舎計画の問題点、5回目は、「庁舎の権利が区分所有権であること」です。


問題点(3)で書いたように、今回の新庁舎は「庁舎がマンションの中に入る」という形をとります。
(3)では、この形式が、「広い面積を確保せざるを得ない」理由の一つと述べましたが、それに関連して、
「他のマンション所有者の権利が、区の権利に影響を及ぼすことはないか?」という問題が出てきます。


一般のマンションを考えればわかりますが、マンションの各部屋の所有者は自分の部屋については
自分だけ(=他人の権利の影響を受けない)の権利を持ちますが、皆で使う廊下や敷地は「みんなの物」
ということで、「共有」ということになります。
この共有部分、基本的に「みんなの物」ですから、一人の所有者が他の所有者の意向を無視して
「自分勝手に使う」ことはできません。だから、総会等で全ての所有者の合意を得、「みんなの合意した
ルールをつくる」ということになります。


問題点(3)では、この問題を克服するため(=区の勝手がいつでも通るようにするため)、一定以上の
面積を確保すれば、「総会等のルール決めの場で、いつでも勝てる」ということでしたが、果たしてこの
やり方、いつも通用するのでしょうか?


第一に、例えば敷地の使用を考えた場合、基本的に「共有」という権利が残っている以上、
「いつでも必ず区のわがままが通る」と言えるのか、疑問が残ります。
通常の場合は、想定内の使用で済むのでたぶん問題はないのでしょうが、災害時などの非常時の際は、
おそらく敷地を「ほぼ全面的に、区の都合で、何日間にも渡って使用する」という事態も考えられます。
マンションの所有者の中にはいろいろな方がいるでしょうから、もし何人かが強行に自分の権利を主張
してきた場合、これを無視し続けても何も問題が発生しないのでしょうか?
「予めルール決めをし、しかも、総会で勝てるように多数を確保する」としても、他の所有者の所有権
という基本的で強い権利をいつでも必ず無視できのるか、となると、区の説明通りにことが運ぶのか、
私は疑問に思います。


第二に、区は「あらゆる場合を想定して、管理規約等を予め定めておくから大丈夫だ」と言いますが、
「あらゆる場合」を全て事前に想定することが可能か、これも疑問です。
上記の通り、非常時や災害時には、予想外のケースが出てくる可能性も考えられます。
そのような「想定外のケース」が出てきた場合、今回のやり方だと、「想定外のケースが出てきた。
新しく他の所有者の合意を得なければならない。臨時総会を開く」とでもやるのでしょうか?
(そんなことをしていたら、災害などの対応に間に合わないのでは?)
区が単独で所有している敷地(現庁舎のような)では、こんな心配をしなくても済みます。


さらに、よく指摘されることに、「好ましくないマンション入居者が入ってきたらどうするか?」という
点もあります。
これに対しても区は、「そのような人間が入居することのないよう、取り決めをしておく」と言いますが、
そもそも予め「問題のある人」をフィルターにかけて“はじく”ことは困難であり、実際に入居して問題
が発生してから、「ルールを適用して、退去してしいただく」となるはずです。
退去前に問題発生を防ぐことはほぼ不可能なのでは?


庁舎が敷地・建物とも、区の単独所有であれば、以上の問題は生じないし、心配しなくて済みます。
マンション型庁舎だからこそ出てくる問題と言えます。