豊島区の新庁舎計画-問題点のまとめ(3)

前回から引き続き、「新庁舎問題」です。
内容に合わせて、タイトルを「新庁舎計画−問題点のまとめ」と変えます。


今回は、「面積は広すぎないか?」という点を考えてみます。


まず、計画の“実態”。
今回の計画では、現庁舎(分館部分等も含む)の総床面積18,073平米に対し、新庁舎の床面積29,100平米
と、なんと1.6倍に“拡大”されています。
 「区はこれから職員を減らすと言っているのでは?」
 「役所業務への民間活用で、仕事量自体が減るのでは?」
 「そもそも区の人口自体が大幅に増えないはずなので、その意味でも仕事量が増えるわけがない」
 「財政難と言っているのだから、大きな庁舎で無理にお金をかけなくてもよいのでは?」
などは当然思い浮かぶ“正論”ですが、区はこれらに対し、
 a:現庁舎は狭すぎて、待合スペースが足りない。
 b:議会も狭すぎる。
 c:会議室が不足している。
 d:職員の事務スペースは1人当たり3.4平米で、国の起債基準の4.5平米を大きく下回っている。
と“反論”しています。
これらに対し、順に“再反論”すると、
 a→IT化(自宅のPCで住民票の写しがとれるようにする等)やコールセンターの設置・活用に
   よって、そもそも「役所に来なくても済む」仕組みを工夫すればよいのでは?
 b→議会が区役所の中で最も稼働率が悪いのだから(例えば、本会議場は年間20日程度使用するだけ)、
   専用スペースを置かず、必要なときに会議室等を借りればよいのでは?
    *何年か前の“合併ブーム”の時、一時的に議員数が増えすぎて、中学校(?)の体育館を
     使っていたところもあったはずです。「やる気になれば」できるはず!
 c→外部利用を積極的に進めれば、“自前”部分は少なくできるはず!
 d→国の起債基準と言うが、これは「絶対守らなければならないルール」ではないはず。これを
   “金科玉条”と考える必要はないのでは?
   それに、そもそも今回の庁舎計画では起債はないのだから、こんな基準を持ち出さずに、
   「自分のルールは自分でつくる」としてもよいのでは?(区内の民間事業者との比較等)


さて、上記a〜dの正当化理由以外に、そもそもなぜ新庁舎が広くならざるを得ないのか、今回の
計画には、以下の通り、大きく2つの基本的な問題点があるものと考えられます。


1.「マンションとの合築」のため、一定以上の“持分”(=面積)が必要になる!

 
 今回の新庁舎は、「マンションとの合築」で、一つの建物の中に、区が区分所有権をもつ形です。
 もっとわかりやすく言えば、「合築」というより、「区がマンションの中に入る」と考えた
 方がよいかもしれません。


 多くの方がご存知のように、一般のマンションでは、各区分所有者が集まる管理組合があり、
 「自分たちのマンションをどうするか?」については、その総会が最高の意思決定の場と
 なります。
 この総会等の場で、区が一組合員として「区の勝手」を主張しても、普通は他の区分所有者
 の合意がなければ、通らないことになります。
 「区の庁舎」は非常時の場合も含め、一般のマンションとは異なる公共性・独自性等を
 確保してなければなりませんから、どうしても「区の勝手」が必要になる。
 従って、「区の必要性」と「マンション形式」は、対立する可能性が大いにある。
 「マンション庁舎」には、このような本質的な問題があると言えます。


 このような本質的な問題をクリアするためにはどうすればよいか?
 ちょうど企業の株主総会と同様、「“自分の持分”を増やせばよい」、となります。
 マンションで言えば、
  「自分の所有面積を、他の多数の区分所有者の合計面積に対抗できるだけの広さになるよう、
   大きく確保する」
 となります。


 新庁舎が必要以上に(と、多くの方が考えています)大きな面積を確保しようとする裏には、
 このような「マンションの本質的問題」があると考えられます。
 *現に、「総会などで区の意向が否定されたらどうするか?」と質問には、「他の区分所有者に
  対応できるような床面積を確保しているから大丈夫」と区は答えています。
  これは、上記の私の見方を逆の意味で裏付けていると言えます。


 無理に「マンション庁舎」をつくらなければ、こんな問題・ムダは起きないはずです。


2.「区役所の将来の姿」について、区(区長)は誤った認識をもっている?


 上記の「これからの庁舎には、今以上の面積は要らないのでは?」の理由として、
  「区はこれから職員を減らすと言っているのでは?」
  「役所業務への民間活用で、仕事量自体が減るのでは?」
 などと述べましたが、この“正論”に対し、区は異なる認識をもっているようです。


 今年3月の区議会副都心委員会での私の質問に対し、副区長は、
  ・地方分権などで、将来は区の仕事量が増えると思われる。
  ・そのため、「区役所で働く人間」も増えると思われる。
 という趣旨の回答をしています。
     ↓
 −下記の中のNo130−
 http://www.kensakusystem.jp/toshima/cgi-bin2/ResultFrame.exe?Code=jejucn3ptc8dzc6egg&fileName=H220318B08&startPos=0


 これ、基本認識自体が「世間の常識」とずれていると言えないでしょうか?


 これでは当然「新庁舎も広くなる」訳です。