豊島区の新庁舎計画-決定前に考えるべきこと
先日、議会の一般質問の場において「新庁舎−決定の前に議論しておくべきこと」として何点か
指摘しました。
論点としては以下の3点です。
1.新庁舎計画に対し、区民のコンセンサスを得ることの必要性について
2.新庁舎の建物・敷地が区の単独所有ではないことの問題について
3.「庁舎位置変更条例」による決定時期について
1.新庁舎計画に対し、区民のコンセンサスを得ることの必要性について
これまで、区民への説明会やパブリックコメントが何度か行われてきましたが、いずれも
参加者は一部少数に過ぎません。
しかも、これらの場において、「全面的に区の考え方に賛成!」という意見が参加者の多数で
あった訳でもありません。
4月に建物の具体的なイメージや計画の詳細が示されたのですから、改めてこの計画が区民の
コンセンサスを得られるものか否か、何らかの形で民意を問う必要があるのではないでしょうか。
2.新庁舎の建物・敷地が区の(完全)所有でないことの問題について
今回の計画にある新庁舎は分譲マンションとの合築(下が庁舎で上がマンション)になっています。
従って、建物・敷地に対する豊島区の権利は通常の分譲マンションにおける“所有権”である
「区分所有権」になります。
この「区分所有権」、通常の所有権(=完全所有権)と異なり、“共有”となる部分があることを
基本的な前提にしています(敷地、建物の共有部等)。
“共有”となると、当然自分一人(この場合は、豊島区)の意向では決められないケースが出てきます。
その部分があることで、行政活動の妨げになることはないのでしょうか?
例えば、災害などの非常時を考えてみると、区役所の敷地を全面的に使い、臨時的に様々な事態に
備えることが想定されますが、“共有”でこの点は大丈夫なのでしょうか?
私もマンション住まいなので、この点は想像がつくのですが、マンションの場合、総会を開くなど
して、他の区分所有者の了解を得なければならないはずです。
ひょっとしたら、「何かあった」都度、マンションの住民も含めた総会を開き、総会の決定に区の対応
を委ねる、などといったことがあるのでは?
現時点での区の説明では、
「管理規約によって、他の区分所有者(=分譲マンションの所有者)の利用に制限をかける」
とされていますが
マンション購入者の重要な権利を全面的に制限できるか、大いに疑問です。
3.「庁舎位置変更条例」による決定時期について
*「議会による庁舎の決定」は、この条例のみ。条例上は「庁舎の住所変更」に過ぎませんが、
実質上、新庁舎計画決定の意味をもちます。
「区の予定」では、この条例を提案して“決定”するのは、10月の第三回定例会をとされています。
しかし、この決定時期、重要な「『権利変換計画』の確定前」なので、不適当と考えます。
今回の建設(庁舎&マンション)は、区を含め、土地を持っている所有者が複数集まって一つ
の土地として一棟の建物を建て、出来上がった建物内に、もともと持っていた土地・建物の価値に
応じて、自分の持分をもらえる仕組みになっています。
このとき、もともと持っていた土地・建物がいくらになり、それが新しい建物内でどれだけ確保
できるかという“資産評価”は非常に重要になります(お互いの利害関係を背景とした関係者の
合意が得られなければ、話が進まない)。
この一連の手続きが権利変換です。
今回の場合、通常の個人の財産の場合とは異なり、「区の資産」なのですから、この権利変換は、
「区民共有の財産が正しく評価されたか?」の意味を持ちます。
「区の資産が不当に低く評価されなかったか?」だけでなく、「できるだけ高い評価を得る」と
いう視点でも、充分時間をかけた“交渉”が必要なはずです。
それを、この権利変換がはっきりと確定しないうちに条例で決めてしまうとどうなるか?
「区の資産評価」が不明確なままで決めてしまうことの無責任さもさることながら、お互いの
利害が絡んだ交渉の中で、「足元を見られる」恐れもあるのでは?(結論がどのように転ぼうが、
結局納得しなければならない、との意味)。
このような理由から、今の「区の決定予定時期」は不適当と考えています。