高浜市の事業仕分けから

アップがちょっと遅れましたが、愛知県高浜市事業仕分けを見てきましたので(6月20日)、一言。
*関係する当市のサイトは、
   ↓
 http://www.city.takahama.lg.jp/grpbetu/zaimu/shigoto/jigyousiwake/H22jigyousiwake.html


特に当市の事業仕分けを見に行った理由は、
 ・仕分けの結論を外部の仕分け人に委ねるのではなく、「市民判定人」に任せる形を取るとのこと
  なので、この「市民判定人」方式が有効なものかどうか、見たかった。
 ・早くから「行政の仕事のアウトソーシング化」を進めたことで知られる当市の行政モデルとは
  どういうものか、議論の過程を通して、幾分かでも知りたかった。
   *事業仕分けの議論を経ると、たとえ「○○モデル」と呼ばれるものであっても、そのマイナス・
    デメリットが出て来る可能性があります。別に“粗探し”をしたい訳ではありませんが、
    何か「発見につながるものでもあれば」と考えました。


1.市民判定人の意義


 昨年、この方式で事業仕分けを行った例があることは聞いていましたが、実際に見るのは初めて
 です。
 今回の場合、
  ・市民判定人は公募で募った。
  ・総数は20人ほど?(私が見た2日目のAグループでは)
 でした。


 結論から言うと、「非常によい形だ」との印象をもちました。


 対象となった事業の仕分け議論が終わり、まず仕分け人の結論が出された後で、「じゃあ、市民判定人
 の皆様のお考えは?」となるのですが(もっとも、時間的には、仕分け人の結論が出される頃には、
 各市民判定人は、結論を記入する用紙への記入をほぼ終わっているようでしたが)、その結論が出た
 後に何人かの市民定人がコメントをする場面が何度かありました。
 そのコメントの内容を聞いていると、極めて真摯な態度で結論が導かれたことがよくわかりました。


 当然と言えば当然なのかもしれませんが、「自分のまちの事業が正しいか否か?」についての最終判断
 は、「そのまちの住民が責任をもって行う」のが“筋”だということでしょう。
 外部から見ておかしいと思える事業でも、「そのまちの住民にとっては望ましい」ということもあり得る
 訳で、市民判定人に一定の“良識”が確保できれば、それを“民意”に近いものとして尊重すべきです。


 今回に限って言えば、この「良識の確保」はうまくいったのでは?


 ただ、問題は、いつでもどこでもこの形がうまく機能するか、です。
 何年も前の某市の事業仕分けにおいて、公募で集めた市民判定人(とは、当時称していなかった?)
 の多くが特定の団体と関連する人間で、そのため、「結論が歪められた」例があると聞いています。
 この辺をどうクリアするか、自治体によって、大いに工夫が必要です。
 

2.市民の関心は?


 実数を知っている訳ではないのであくまで主観的な推測ですが、他の自治体の事業仕分けと比べ、
 今回の仕分けへの「一般市民の傍聴者」は、割と多かったのではないでしょうか。
 仕分けの議論の最中、コーディネーターによる「市民の方で、これを知っている人は?」などの質問
 への挙手の数からの推測です。


 これまで何度も自治体の事業仕分けを見てきましたが、見に来る人間と言えば、「(事業仕分けに)
 関心を持っている外部の人間」(例えば、私のような)か、「議員らしき方」「職員らしき方」などの
 “特殊な層”がどうしても多くなりがちです。
 この点が、事業仕分けの大きな課題の一つと考えていましたが、今回はちょっと様子が違った感じです。
  ・昨年来、国の事業仕分けが大々的に行われたので、関心を呼んだ?
  ・高浜市民の参加意識がもともと高い?
 

 “憶測”ですが、これは、市民判定人の形をとったこととも関係しているのではないでしょうか。
 広報も確かに大事ですが、こういった試みへの参加者の確保には、なんといっても「直接の口コミ
 による働きかけ」が最も有効と考えます。
 2日間の市民判定人の延べ人数がいくらかわかりませんが、仮に2グループ合計で60人ほどとしても、
 各判定人が、
  「自分が“仕分け人”をやるから見にきて!」
  「今度、あなたが関係しているこの事業が“仕分け”られるから、是非見にきて!」
 などと知り合いや“関係者”に呼びかければ、結構な数は集まると思います。


 この意味からも、市民判定人形式は有効だと考えました。


3.「行政のアウトソーシング化」の“高浜モデル”はうまくいっている?


 冒頭の私の「参加動機」にも述べた点です。


 これまで、高浜市の「行政のアウトソーシング化」については、その意義・実績がさかんに強調され、
 「行政視察のメッカ」(?)みたいにも言われていたと記憶しています。
 私の認識ですが
  ・前市長時代、行政の業務の受け皿となる高浜市総合サービス株式会社(市が100%出資)を
   つくり、他の自治体に先駆けて、行政の業務の民間委託を進めた。
  ・対象業務については、他の自治体の委託範囲を大きく超えて拡大した。
  ・その結果、職員数の削減・行政コストの削減など、行政改革の成果が大いに上がった。
  ・行革だけでなく、「地元の雇用を生み出す」という点でも、意義が大きいものとされた。
 といったところでしょうか。


 今回の事業仕分けにおいては、私の期待通り(?)、この総合サービス株式会社(以下、「同社」)に
 関連した事業も幾つか取り上げられていました。


 あくまで「事業仕分けの議論」からの判断ですが、この高浜モデル、どうも“修正”が必要なようです
 (「大幅な修正」か、「微修正」かはわかりませんが)。


 「行政の仕事を広く請け負える民間がない」からこそ同社が設立されたのでしょうから、当然ながら、
 設立当初は競争相手がいない。
 したがって、市が同社と契約する際は、「同社を育てる」という目的もあり、随意契約となる。
 この形を続ける中で同社の“実力”も上がってくるので、ますます「市の貴重な戦力」と認識されて
 くる。
 こんな感じで“高浜モデル”が磨かれてきたのだと思います。


 しかし、問題は“現時点”です。
 指定管理の受け皿となる民間企業が数多く育っている今(実力は別として)、「同じ民間企業」と
 考えた場合、同社のみが市から特別扱い(随意契約など)を受ける正当性が果たしてあるかどうか?
 また、市民と行政との協働が、様々な面で高浜市にも広がり、民間企業以外の受け皿も出現している
 (しつつある?)現在、行政の仕事の受け皿として、民間企業(当然同社も含む)以外の可能性も
 大いに探るべきではないか?


 今回の仕分けの中で、何人かの仕分け人の方から、こんな指摘がされていました。
 仕分け人からの指摘に対する説明者(市職員)の説明は、的確なものだったとは言えませんので、
 たぶんこれらの点が、“高浜モデル”の今後の課題になる可能性があると感じた次第です。