「健康な都市」への課題

先日のNHK番組で、メタボ対策の生活習慣改善(運動・栄養管理)において、従来にない
高い継続率(要するに、“3日坊主”で終わらない!)を上げている例が紹介されていました。


「健康が大事!」と叫ぶことは誰にでもできますが、「都市全体によい影響を及ぼす、有効な
健康な施策」が何かについては、“グッドアイデア”が見つかっていないのが実情ではないで
しょうか。
番組で紹介された例も含め、考えさせられたことを述べてみたいと思います。


1.第一段階:「よし、やるぞ!」と思った人間の「継続率を上げる」には?


  一般に、一度は「健康によいライフスタイルに変えよう」と決意しても、それがなかなか
  長続きしないものだと言われています。
  今回の番組ではこの“壁”を乗り越えるために、
   1)意識付けの頻度・手軽さの面での工夫
   2)「やる気を起こさせる」情報提供のあり方の工夫
  が取り上げられていました。


  1)として取り上げられたのは、自身の健康情報(運動の量・効果など)について、駅や
  スーパーなどに設置された端末で気軽に確認できるようにした点です。
  従来は、自宅のPC等での確認が一般的でしたが、これだと確認が億劫になりがち。
  「買物ついで」「お出かけついで」に、いろいろな場所でチェックできるようになれば、
  それだけ「意識付け」の頻度が上がり、次の行動に結びつくというものです。


  2)としては、「ほめる→やる気を起こさせる」という原則に基づいた、効果的な「言葉
  のアドバイス」です。
  例えば、運動や栄養管理による体重の抑制(減少)はなかなか効果が出にくいもの。
  それを、「効果が出てない」「変化なし」などと事実のみを提示されれば、だんだん
  やる気が失せていくのが一般的と言えます。
  番組で紹介されたある保健指導の企業は、対象者にアドバイスを与える際、「効果的な
  ほめ言葉」の文例を何種類も用意して、「ほめておだてる」(?)を徹底していたよう
  でした。


  1)2)ともに共通するのは、考えるべき「人間モデル」が従来と比べて変化したという
  ことなのではないでしょうか。
  従来は、言わば「良い子」「優等生」をモデルにしていたと言えます。
  「良い子」は、「健康はよいことだ」と言われれば、素直に・まじめに教えを守ります。
  これまでの健康政策の「啓発」などはまさにこんな感じでやられていたと言えるでしょう。


  しかし、数で見れば、世の中では「よい子」は少数派です。
  ここに気づいた上での「画期的な“方向転換”」が今回の取組みだと考えました。


2.第二段階:「よし、やるぞ!」とも思わない人間のライフスタイルを変えるには?


  これは、番組とは関係なく、後で私が勝手に考えた“切り口”です。


  上記1は確かに重要ですが、改めて世の中を見ると、「『よし、やるぞ!』とも思わない人間」
  の方が、よほど数が多いのではないでしょうか(誤解のないように言っておきますが、この点
  を捉えて「人間の優劣論」を展開するつもりはありません)。
  このような方々にいくら「健康論」を展開しても効果はあまり出ないでしょう。
  

  ただ、「健康政策の目的」からすると、このような層を取り込まないと有効な施策には
  なりません。
  医療費の増加が財政上の大きな問題になっていますが、増加を抑えるには、「よし、やるぞ!」と
  思う人だけでなく、思わない人についても、“どうにかしてでも”効果を上げなくてはならない
  からです。


  この点をどうするかについてのモデルのようなもの(特に、都市に関して)はまだないようですが、
  少なくとも言えるのは、
   ・運動(と言うより、「歩く」などの物理的な行動)をせざるを得ないような環境を設定する。
   ・「多少の不便さも仕方ない」というような“常識”を普及させる(この場合、「不便」という
    とマイナスに聞こえるので、政策論的には、「健康志向の質実なライフスタイル」とでも
    言い換えた方がよいか(?))。
  などではないでしょうか。


  「生活のあり方」「まちのあり方」の点で言えば、例えば、
   ・買物を地元の商店街でする → その分歩くようになる(⇔大店舗でのまとめ買い・宅配)
   ・「歩いて行ける範囲内」に行政サービス拠点を設定する。
    (ついでに、「出かけていくと何かの得がある」というような“仕掛け”があれば効果的か?)
  などが考えられると思います。


  まだ思いつきの段階なので、具体的なポイントが多くありませんが、いろいろな観点から、今後
  考えてみたいと思います。
   *前回のこのブログで取り上げた「ペット」も、この点では面白い切り口になるかもしれません。