独立行政法人の事業仕分け

4月28日、独立行政法人事業仕分けの傍聴に行ってきました。
 *傍聴したのは、
  「大学入試センター試験の実施等」
  「東京事務所・施設の運営」
  「大学情報提供事業」
  のみ(全部聴けなかったものもあります)。


「待ちが出ている」との報道通り、当日は会場入口で空き待ちの行列に並ばされました。
ただ、知り合いの仕分け人の方によると、「今日は傍聴者が比較的少ない」とのこと。
昨年11月に比べて傍聴席の総数が減った上、注目を浴びているのでしょう。


以下、ちょっと遅れてのコメントになりますが、一言。


1.総論としての雑感


 昨年の仕分けについては、
  「果たしてどれだけの効果が出るのか?」
  「官僚はどんな“抵抗”をしてくるのか?」
  「国の事業について、どんな“サプライズ”が出るのか?」
 等、様々な“希望”がありましたが、今回については、効果も限定的のようですし、官僚の
 抵抗もたかが知れた感があったので、個人的には、何となくそれほどの期待が持てない感じ
 でした。


 まあ、子ども手当や農家への所得補償・高速道路・高校の無償化等、「大きな財源問題」が
 “別途進行中”の状況下では、「政治の全体の中で、今一番大事なこと」は、少なくとも
 この仕分けそのものでないことは明らかなはずです。
 私の中ではそんな思いも底流にあったことは事実です。


 しかし、これは、仕分け人の方々の議論の中味への期待とは別物であり、今回も、仕分け
 そのものについては、考えさせれられる点が幾つかありました。


2.仕分け議論が焦点を当てるべきこと


 冒頭の通り、今回私が見たのは項目にして3つの事業だけですので、あくまでそこから
 感じた印象です。


 どの事業についても、
  ・事業遂行に当たっての、契約のあり方の問題(「随意契約」の問題等)
  ・オフィスの広さ
  ・オフィスの所在地
  ・もっている資産の有効活用
 等、コスト面における、定型的(?)とも思える切り口からの質問がかなり出されて
 いました。


 これはこれで非常に大事な問題だとはわかるのですが、同じ限られた時間の中でやるなら、
 より本質的な「そもそも論」にもっとウェイトをかけた方がよいと、改めて思いました。
 きっと事前の調査・検討段階でこれらの切り口については、議論なりをしているのだと
 思います。
 それならそれで(orだからこそ?)、事前にまとめてある程度仕分けられる側と議論し、
 その結果を仕分けの中でまとめて発表してしまうようにはできないでしょうか。


 そうすれば、「そもそも論」をもっと議論する時間が生れると思うのですが・・・


 例えば「大学入試センター試験」。
 私は、センター入試の前身である共通一次試験の“二期生”ですが、前々から思っていた
 のは、
  自分の大学が欲しい学生を“採用”しようという時に、他でつくってもらった試験問題
  を平気で使って何とも思わないのだろうか?
 という点です(センター入試が全てでないことは当然として)。
 確かに、少なくとも国立大の場合は、“お付き合い”の面があるのでしょうが、それぞれ
 の大学で教えていらっしゃる方々には、独自のポリシーなりプライドがあるのでは?


 大学間の競争・個性化の発揮が叫ばれている今日、今一度この問題について考えてみても
 いいような気がします。
 大学側の問題だけでなく、高校生の学力低下・無個性化(?)にも、この「画一的な試験
 を強制受験させる」ことが影響を与えているかもしれない、などと考えます。


 こんな感じで、各独法の「仕事のそもそも論」をもっと追求して欲しいと感じました。
 *センター試験について言えば、冒頭の事業の説明においてこれまでの経緯が説明されました
  が、その中で、この点にも触れられたとの解釈なのかもしれません。


 せっかく錚々たる仕分け人を集めているのですから、今後、この辺のさらなる“突っ込み”を
 期待したいと思います。


3.独法に共通的な(一部の)改革について


 そうは言っても、さすがに「選ばれた仕分け人の方々の議論」です。
 上記2の「定型的な切り口」を通じても、いろいろと考えさせれられたことがあります。
 以下、ひょっとしたら今回の仕分け等で既出の論点かもしれませんが、私なりに考えた改革の
 一つの考え方です。


 非常に大雑把に言うと、そもそも独法は、「国がやっていた仕事」の中、「民間的なやり方で
 やれそうなもの」を国から部分的に切り離したものです。
 その切り離しの際、「丸裸で放り出す」わけにはいかないので、人員・お金・設備・他の資産
 などを付けてやったと言えるでしょう。
 してみると、このお金・設備・資産などは、一種の“手切れ金”です。
 今、この“手切れ金”が多過ぎたのではないか、と指摘されているのですから、「一旦国に返し
 て“再評価”する」というのは、やはり必要でしょう。


 その上でですが、今回の議論でも一部指摘されていたように、各独法に共通的な業務(間接的な
 業務等)を極力アウトソーシング化するという“原則”で進めてはどうでしょうか。
 「独法が直接やる」のは、“仕分け”の結果「オリジナルの仕事」と判定された業務のみに絞る
 ことにする訳です。


 例えば、今回の議論で指摘のあった「自前の会議室」の問題。
 独法側の説明では、「自前の会議室」の必要性について、
  ・参加者の利便性(場所も含めて)。
  ・会議で使われていないときにも有効活用できている(倉庫等?)。
  ・一つの会議と言っても、民間のように単純に「1時間単位」に割り切れないので、設備・
   準備等を予め用意する必要がある。
 本当にそうかどうかはわからないものと考えます。
 しかも、稼働率の考え方が必ずしも時間単位ではないので、有効活用されているか否かの判断が
 困難です。


 そこで、各独法ごとに「それなりの広さの会議室」をもつことをやめ、既存の民間会議室を
 借りるか共通な会議室をもつこととする。
 会議室の仕様や「特別な公の仕事」(?)に対応することを考えると、「共通な会議室」ビル
 があってもよいかもしれません。


 そこでは、基本的に1時間単位の貸し出し料金を決め、あくまで「時間貸し」とする。
 こうすると、コストだけでなく、会議能率・内容の適否などの判断もできるようになるかも
 しれません(「3時間もかけて単純な説明だけで終わった。何をやっているんだ!」などと)。
 また、空いている時間は、一般への貸し出しも認めることとする。
 これを完全な民間の運営でやるようにすれば(もちろん、公平な競争入札で)、施設の有効活用
 ができるはずです。
 設備と運営を一体化して効率化を狙うという点を考えると、この施設の運用に当たっては、
 “本来の”PFIがよいかもしれません。


 こんな感じで、人事・総務・広報(特に、“お知らせ”程度のもの)などの間接業務を極力
 アウトソーシング化してしまう。
 「独法の一括改革」という観点からすると、バラバラにアウトソーシングするよりは各独法
 の間接業務をまとめてアウトソーシングした方がよいかもしれません。
 場合によっては、上記のPFIの中に含めてしまうことも考えられます。


 個々の独法を細かく検討したわけではありませんから、この手法が全独法の何%に適用可能か
 どうかわかりませんが、今回の仕分けの議論を聴いて改めて考えた点です。