「野党・自民党」による事業仕分け

4月5・6日、自民党による、「現政権を対象とした事業仕分け」が行われました。
野党となって初めての事業仕分けなので、どんな内容になるのか、非常に興味が
ありました。


初日の
 ・子ども手当
 ・高速道路無償化
はインターネット中継で、その後の
 ・農家への個別所得補償制度
 ・消費者委員会
は会場で傍聴しました。


一部のみの傍聴ですが、総論的に考えた点を一言。


1.事業仕分けは、野党がやるもの?


  今回の仕分けは、与党時代の仕分けでも活躍された河野氏平氏等が中心となっていた
  ようです。
  率直に言って、非常に迫力があり、議論の内容も“聞きがい”があったと思います。
  昨年までの事業仕分けも非常に参考になったのものでしたが、今回はそれ以上の感じ(?)。
  これはやはり「野党になった」からでは?


  与党時代の場合、いくら厳しく国の役人を責めたとしても、「だってあなた方が政権を
  運営しているんだろう!」とどうしても聴いている方は考えてしまいますし、仕分けする側
  としても、どうしてもその点での“負い目”(?)が感じられました(少なくとも、私は)。
  今回は、「名実ともに責める側になりきれた」ので、有効な議論になったものと思います。


  事業仕分けといっても、やはり「政権を賭けた政策論争」が基本にあるべきと改めて思い
  ました。
  だから、やはり「仕分けるなら、政権担当能力のある野党」と考えます。


2.役人をサンドバッグにするのは、もう限界?


  事業仕分けというと、責められる側(事業の説明者)は役人ですが、今回を見る限り、かなり
  無理があるのでは?
  特に、初めの3つの政策は、政策的合理性において、必ずしも役人自身が納得して説明・答弁
  に当たっている訳ではありません(と、思います)。
  現在“お仕え”している関係上、立場の必要性からやっているもの。


  でも、「民主党の政治家がやれと言っているからやっているだけ」と開き直る訳にも行かず、
  さりとて、自分勝手な正当化論理を展開する訳にも行かず(後で何を言われるかわからない
  でしょうから)、といった感じで、その苦しい胸の内がひしひしと伝わってきました(別に、
  同情している訳ではありませんが)。


  特に、政党の看板政策を仕分ける場合は、やはり役人ではなく、立案者の立場にある政治家・
  政党側の人間が説明者になるべきです。
  ただ、呼んでも、果たしてやって来るかどうかという問題はありますが・・・


  *今回の最初の3つの看板政策の場合、「財源をどうするの?」という質問がありましたが、
   これについては当該省庁では無理でしょうし、財務省でも無理でしょう(うっかり
   「増税も・・・」などと発言したら大変なことになりますから)。
   そういった意味でも、「最後は政治家」になるのだと思います。


3.仕分けの主催は、第三者的な立場の団体などがよい?


  上記2とあわせて考えると、仕分けを主催するのは第三者的な立場の団体がよいかもしれません。
  仕分け人も説明者も政治家がなるとすると、野党・与党のどっちが主催者になっても、公平性の
  点で問題が残ります。


  どの団体が適当かは今結論は出ませんが、消費者団体・経済団体等、複数の主要な団体が合同で
  やる形がよいのでは? 
  そして、主催者が仕分け人となる野党と説明者となる与党を呼ぶ、こんな形でしょうか。
  ただ、そうなると、コーディネーターは与党・野党に属さない立場の人間を主催者が選択する
  方がよいと思います。


4.説明者の反問権も認める必要があるのでは?


  これは、国だけなく自治体も含めた事業仕分け全般について言えることです。


  改めて考えたのですが、説明する側の、仕分け人に対する「反問権」を確認してはどうでしょうか。
  この場合の「反問権」とは、仕分け人が言っていることの不適切な点に対し、堂々と(?)反論
  するという意味です。


  説明者は、問われた点に的確かつコンパクトに答えなければならないことがまず求められますが、
  仕分け人の中でも全てが“まっとうな”(?)方ばかりではありません(別に今回の自民党
  仕分けを指している訳ではありません)。時々、「?」と思う質問をする人もいます(仕分け人と
  しての、自己反省も多少込めています)。
  そんな時には、遠慮なく反問することを、ルールとしておく(これまでにもやっていた説明者の方
  もいたと思うので、「ルール」というより、「確認」か?)。
  「的確かつコンパクトに」であれば、かえって議論が充実したものになると思います。  

  
  今回のような「政治家 VS 役人」では難しいかもしれませんが、上記2の「政治家 VS 政治家」
  だけでなく、第三者(市民を含む)が仕分け人となる自治体の事業仕分けの場合、ある程度必要だと
  考えました。


以上が今回の仕分けを通して考えた点ですが、余談的にもう一言。


一日目の最初の3つの事業では傍聴者が結構いましたが、それが終わると、“ギャラリー”が急に減り
ました。どこからどこまでが純然たる傍聴者席かわかりませんが、私の周りにはほとんど人がいなくなり、
数えると、私を含めて7人?(報道や主催者側の方は除く)
このときは、瞬間的に仕分け人の方の中でも退出される方が何名かいたので、仕分け人は4名(他に
ボランティア・スタッフが2名)。
そして、説明者が別々の省庁から1名ずつの計3名(後ろに何名かいましたが)。


という訳で、何とも寂しい光景を見ました。
「野党になったのだから」と言えばそれまでですが、これから責任野党として国民にアピールしていこう
という矢先にこんな状態でよいものかと、他人事ながら心配になりました。
自民党の地方議員に動員をかけるとかして、活気を出すような工夫が必要では?
(もっとも、動員をかけても集まるかどうかはまた別だとは思いますが)


政権担当能力のある与野党が、国民の熱い視線を浴びながら、真剣に仕分けの議論に取り組む」姿が、
「国の事業仕分け」の理想の形なのだと改めて思いました。