H22年豊島区予算について(7)−環境

環境施策についてです。


昨年、豊島区では、区長の“肝いり”の下、「グリーンとしま再生プロジェクト」なる試みが
なされました。
内容はというと、区内の全小中学校(区立の計31校)に計10,000本の木を植えるというものです。
ただでさえ狭い小中学校の敷地に無理をして大量の木を植え込んでどんな意味があるのか、
多くの区民からも疑問の声が上がり、私も議会で正式に反対をしました。
    ↓
http://d.hatena.ne.jp/hino-katsuaki/20090330


さて、今年ですが、この「木を植える」をまたやるとのこと。
今度は、区民ひろばや集会室・地域文化創造館・特養ホームなどを“総動員”して植え込む計画です。
改めて「事業の適切さ」を考えるために、昨年と比べてみます(経費は概算。補正予算での追加や
「来年度分」の差し引きなどを調整した額)。


        H21年      H22年
 ○対 象:31の小中学校  31の公共施設(増える可能性あり)
 ○総本数: 10,000本    5,000本
 ○経 費:約3,100万円   約4,000万円


本数が半分なのに、経費が1.3倍になっているので(1本当たりだと3倍弱)、予算委員会の席で、
 「(値段が)高い木でも植えるのか?」
と質問したところ、
 「昨年は学校のためにある程度のスペースがとれたが、今年はスペースがないところが多い。
  そのため、狭いところに植え込む分手間がかかる。そのため人件費等の増加分」
とのことでした。
要は、「狭いところに“無理をして”植えるから、余計なお金がかかる」という訳です。


もう一つ、昨年あれだけ叫んでいた「二酸化炭素の削減」をほとんど言わないので、
 「あれはどうしたのか?」
と質問してところ、
 「昨年は小中学校が対象のため、教育の意味もあってスローガン的に(?)に言った。二酸化炭素
  削減のために直接結びつく手段とは考えていないので、謳っていない」
そうです。
結局、「木を植える」は、「環境をよくする施策」ではなく、「区民の意識啓発」のための事業と
いうことになのでしょう。


改めて、次の理由で、この事業には反対します。
 1)ただでさえ狭い公共施設の敷地に「無理に植え込む」のは、おかしい。
   そのために余計な作業・手間が増える。
   *昨年もそうでしたが、“現場”では「そんなことは止めて欲しい」との声が上がっています。
    「表立って言えない声」ですが、私はこれが現場の本音だと考えています。
 2)「都市部だからこそやる環境施策」とのことですが、何か方向が間違っていないか。「都市部
   だからこそ」の施策としては、もっと有効なものがあるはず(後述)。「他でやっていないから」
   という理由だけでやるのは、環境施策を単なる“ファッション”と考えているからではないか?
 3)もし植樹にこだわるのであれば、場所は豊島区のような都会ではなく、地方の山間部などの方が
   よい。日本全体を考えた上での森林整備・林業振興になる上、人の移動に伴う地方の活性化の一助
   にもなる。


もう一つ、「都市部だからこそできる環境施策」としては、港区で非常に有意義な試みが進められて
いるので、注目しています。


港区では、「みなとモデル二酸化炭素固定認証制度」というものが準備されています。
これは、
 「木材が二酸化炭素を固定している点に着目して、区内の開発事業者に対して一定量以上の国産材の活用
  を誘導するために、国産材の利用に応じた格付け・認証等を行う制度」
で、
 「この制度が完成すれば、都市と山間部が森と木材を通じて結ばれ、日本の森林整備の促進と森林吸収に
  よる二酸化炭素削減に大きく寄与します」
とのこと。
都会のライフスタイル・消費スタイルを少々変えるだけで、直接的に二酸化炭素削減に寄与でき、しかも
自治体で完結せずに、全国を巻き込んだ取組みに発展する可能性を秘めています。
 *詳細は、以下
  ↓
 http://www.city.minato.tokyo.jp/joho/gyomu/kankyorecycle/kankyo/topics/daisannkaiminatomodel/index.html


同じ「都市部だからこそできる環境施策」でも、豊島区とはずいぶん違うのでは?
無理して“森もどき”をつくって自画自賛しているより、直接的な環境施策で、しかも発展可能性のある取組み
私見ですが、港区の場合、建築材だけなく、消費財にまで認証制度を拡げていければ、もっと広く有効な
施策になると考えます)に向って知恵を絞るべきだと思います。