H22年豊島区予算について(4)−健康

4回目は健康施策です。


この分野の最終的な目的は、その自治体に住む人間の「心身の健康」を増進させる
ことにあります。
健康の増進は、当然「医療費の増加を防ぐ」という財政的な課題にも結びつきます。
自治体の事業仕分けなどでも、これに関連した事業がよく取り上げられますが、熱心
自治体が「有効な予防策」を展開するのに対し、熱心でない自治体は極論すれば、
「単なる普及・啓発運動を申し訳程度にやる」といった違いが見られます。


さて、豊島区ですが、前回の介護予防に続いて、新潟県見附市との比較から、
そのあり方を検証したいと思います。
これも、前回同様、主に「目標の設定の仕方」を比較します。


まず、豊島区の健康施策の内容は、「豊島区健康プラン」で説明されています。
      ↓
http://www.city.toshima.lg.jp/kusei/houshin/hokenfukushi/014333.html


同様に、見附市の健康施策の内容は、「いきいき健康づくり計画」で説明されています。
      ↓
http://www.city.mitsuke.niigata.jp/ctg/Files/1/00320632/attach/honkeikaku.pdf


どういった分野で事業を展開していくか、といった分類の仕方では、豊島区の方が若干
細かいですが、大きなくくりでは、
  食生活・栄養に関わる分野
  運動に関わる分野
  心・精神に関わる分野
  健診に関わる分野
に分かれる点はほぼ同様です。
しかし、「何でもって健康のあり方を測るか?」という基準・指標の設定の仕方の点で
違いがあります。
 

1.食生活・栄養の分野


 「朝食をきちんととる人の割合」といった点では、その数値のアップを成果指標とする点
 では同じですが、「栄養バランスがとれているか」という点では、次のような相違があります。


  豊島区:「栄養表示を参考にする人の割合」
        H19年・57.7%(現状) → H25年・60%以上(目標)
  見附市:1)「ほぼ毎食、主食・主菜・副菜をそろえて食べる人の割合」
        H19年・70.0%(現状) → H25年・80%以上(目標)
      2)「ごはんを中心とした日本型食生活につとめている人の割合」
        H19年・79.4%(現状) → H25年・85%以上(目標)


  一見同じようなことを言っているようですが、豊島区の「栄養表示を参考にする」は
  「だから、どんな食生活が望ましいのか?」という内容に触れていない点で抽象的である
  上、「参考にする」と「食生活がよい方向に変わる」が直接結びついていない点(「参考
  にはするが、実行はしない」人は、本来目標数値にカウントすべきでない!)、目標設定
  のあり方として、まずいのではないでしょうか。

 
  食生活に対する意識付け・行動目標(望ましいライフスタイルへの転換)の明確化の点で、
  見附市の方が、具体的でわかりやすいと言えます。 


2.心・精神に関わる分野


  この分野、まず豊島区が「こころ」と称しているのに対し、見附市は「生きがい分野」と
  称しています。
  この「タイトルの違い」は、次のように指標の違いにもつながってくるようです。


  豊島区:1)「意識的にストレスを解消する人の割合」
        H19年・52.7%(現状) → H25年・60%以上(目標)
      2)「親しい人との会話を楽しめる人の割合」
        H19年・55.0%(現状) → H25年・60%以上(目標)
  見附市:1)「趣味や楽しみとなっている生きがいを持っている人の割合」
        H19年・46.8%(現状) → H25年・60%以上(目標)
      2)「60歳以上週2〜3回以上外出する人の割合」
        H19年・71.7%(現状) → H25年・80%以上(目標)
      3)「ストレスや不安を感じても元気になれる人の割合」
        H19年・79.8%(現状) → H25年・80%以上(目標)


  豊島区の1)と見附市の3)は同様の指標と言えますが、見附市の1)2)は、上記
  の食生活・栄養の分野と同様、行動目標が明確と言えるのではないでしょうか。
  そして、この1)2)、地域コミュニティへの参加を誘導しようとしている点、
  「健康づくりと同時に地域づくりも狙う」といった地域戦略が読み取れます。
  *同じ視点で見ると、見附市の食生活・栄養の分野にある「学校給食における見附産
   農産物を使用する割合」も、地域づくりへの誘導の一環と言えると思います。


3.健康施策で本当に医療費が下がるか?


  見附市のHPにはもう一つ、大変興味深いデータが載っています。
   「見附市・医療費分析」
     ↓
  http://www.city.mitsuke.niigata.jp/ctg/00310752/00310752.html


  これは、見附市が大々的に展開している「健康運動教室」の参加者と非参加者の医療費の
  の比較で、「健康運動教室に参加した人間の医療費が少ない!」ことが明確にわかります。
  総論的に、「健康なまちづくりで、医療費を減らす」と言っている自治体は多いですが、
  「自分のところでやっている健康施策が本当に有効か?」という検証をここまで明確に
  行っている自治体は少ないのではないでしょうか。
  やっている内容によほど自信がなければこんな検証はしようとしないでしょう。
  見附市の“本気度”が見て取れると思います。