合理的な都市経営モデルとは?-東京23区の課題
昨年12月、経済産業研究所のBBLセミナー「IBMの考える新しい世界-Smart Planet
とクラウドコンピューティング-」に参加しました。
それ以来、東京23区の合理的な都市経営を考える上で、この技術・考え方を発展活用・
拡大的応用することができないか、考え続けています。
私が理解した範囲ですが、講演の基本的な技術的内容は、今注目のグリッドとクラウド
を基にしたものであり、その活用・応用についてです。
従来の一般的な解説等とそれに基づく私の理解では、
グリッド:ハードの“シェア”
例)空いているPCを有機的につなげて、大型コンピューター(?)並みの
機能をつくり出す。
クラウド:ソフトの“シェア”
例)普段PC上には何も置かず、必要な時に、ネットからソフト・データを
取り込んで使う。
ですが、「ITに関する“シェア”」という点で見ると、これまでのように区別して考えず、
「ハード・ソフト総体の、新しい拡大的活用」とでも理解した方がよいようです。
様々な事例が挙げられていましたが、「スマートグリッド」「スマートシティ」と言われる
次のような事例が「効率的な都市経営」に大いに参考になるものと考えます。
・電力の需要・供給管理システム
・水道の需要・供給管理システム
・交通システム
・(安全のための)監視システム
いずれも、時々刻々と変化する「都市の(需要)状況」に対し、各家庭・各所にそれを関知
する“センサー”を設け、各ポイントから寄せられる“数値”に基づいて、全体としての
最適解を瞬時に出して効率化を図るものです(この過程で、当然グリッド・クラウドが機能する)。
典型的なのが電力・水道と言えますが、ある一定の規模(自治体等)の中での、あるサービスに
対する需要と供給を効率よくコントロールして、その規模における“全体最適”をめざすものと
も言えましょう。
一定の規模の中で、提供するサービスの効率化を図る訳ですから、この考え方を、もっと広い意味
での、「複数の自治体間での、行政サービスの共同運用(処理)」に適用できないものでしょうか。
個々の自治体が福祉・教育・清掃・交通など、全ての行政サービス分野を抱えているのは
(=フルセットモデル)、効率が悪い。
だから、複数の自治体間で、行政サービスの提供を「共同化」してしまう。
ただ、課題は、広域になるほど、需要・供給の偏在が問題となり、常に効率的な資源配置を行うこと
が難しい。
そこで、常に変化する需要状況に応じて、最適な(或いは、それに近い)供給体制をフレキシブルに
構築する。
その基本的なインフラとして「スマートグリッド」「スマートシティ」を構築・活用する、というもの
です。
まあ、同じ「サービスの提供」でも、例えば福祉的なものは、電力や水道のように「時々刻々と大きく
需要状況が変化する」というものではないでしょうから、どれだけ“鋭敏な”センサーを置くべきかは
問題になりますが、少なくとも、正確な需要予測をたてられるほどのものを置ければ、その予測に
基づいて、人員・物資等の効率的な事前配置は可能になるはずです。
それを多数の行政分野で行えれば、複数の自治体を合わせた職員の数や施設の数・物資の数が削減できる
のではないでしょうか。
特に、私の住む東京23区においては、
・面積的に狭い範囲に自治体が“密集”している。
・日常的に、人の行動が複数の自治体にまたがっている。
・現在でも、「大都市事務」として、各区の行政分野の一部(重要な部分もあり)を東京都が“代行”
している。
などの条件があるので、上記のようなアイデアの“実践”には適していると考えられます。
今後、どのような分野で、どのような応用が考えられるのか、課題として考えていきたいと思います。