行政刷新会議の事業仕分け(3)

仕分けの前半戦が17日に終わり、様々な指摘や批判が出ています。
私が傍聴したのは5日間中4日だけですが(それも部分的)、対象事業ではなく
「仕分けのあり方・やり方」に関連し、考えたことを幾つか述べます。


1.仕分けの議論の進め方について


 1)仕分け人の数が多過ぎる!?
   

   今回の仕分けでは、仕分け人が常時10人以上(少ない場合もあり)いる
   ようです。
   「様々な論点を出そう」「多様な観点を踏まえよう」という意図かも
   しれませんが、これはちょっと多過ぎではないでしょうか。


   仕分け人は各々の分野で“一騎当千”の方のようですから、それぞれに
   「重い論点」を出します。
   それはそれでよいのですが、制限時間の関係上、このスタイルだと、
   「各論点で議論を深めていく」という仕分けの特長が出せない気がします。
   確かに、仕分けの冒頭で仕切り役の国会議員から論点の説明はありますが
   (財務省の筋書き?)、どうしても仕分け人それぞれの論点提示・意見表明
   と多少強引な(?)結論付けで終わってしまい、不完全燃焼感が否めない気
   がします。


   「結論ありきの政治ショーだ!」という批判に対抗する意味でも、財務省
   が出してきた論点(傍聴者にも配られている財務省の論点しか見ていません
   が)だけでない議論の深まりを期待します。
   そのためにも「人数の適正化」が必要と考えます。


 2)論点として盛り込むべきもの


   仕分け開始から1週間も過ぎてくると、今回の仕分けに対する批判として、
   「切られる側」「影響の及ぶ側」の事情がさかんに出されてきています。
   やはり、この点を意識した議論は必要でしょう(もちろん、私が聞いた中
   でも触れられていた場合もありましたが、主要な論点としては、あまり
   取り上げられていないのではないでしょうか)。


   もちろん、今さら対象事業に関わる多くの人間のヒアリングなど無理です
   から、「想定される影響」でもよいと思います。
   少なくとも、当該事業がなくなったとした場合の
    ・関わっている人間への影響
    ・地方への影響
   などは、論点として明確に議論すべきです。
   もしわからない場合は、正直に「わからない」として、その後の議論などに
   委ねてもよいと思いますが。


2.説明者の「説明のあり方」について


  ニュース映像などで特に強調されたのが、説明に当たる官僚について、
  「説明の技量が不足しているのでは?」という点です。
  この点はマスコミ報道で強調され過ぎた観がありますが、確かにもっともな
  指摘と感じます。


  当該事業そのものが「どう見ても合理性を有しない内容」であるなら仕方
  ありませんが、そうでない場合にも見受けられるのが気になります。
  例えば、17日に「介護予防事業」が仕分け対象になりましたが、この事業の
  有効性・必要性をほとんど説明できず(率直にそう感じました)、仕分け人
  から逆に“援護射撃”を受ける始末でした。
  私自身、学習療法等でこの事業に関わってきたこともあり、様々な介護予防
  手法の重要性については理解しているつもりです。ですから、この事業の
  説明に当たる担当者の話し方に非常にもどかしい思いをしました。


  しかし、振り返ってみると、厚労省が介護予防を強調し出した頃に説明に
  当たっていた担当課長の話などはこんなものではありませんでした。
  期待される効果や現時点での検証度合いなど、きちんと説明していた記憶
  があります。


  なぜこんなに違うのか?
  あくまで個人的な推測ですが、考えられる原因の一つとして、「説明者の立場」
  がはっきりしていないからではないでしょうか。
  「自分の担当の事業の正当性を主張することを第一とする」のか「現政権を
  握っている民主党に協力することを第一とする」のか、この点が曖昧なままで
  議論に臨んでいるからではないでしょうか。
  はっきりと前者の姿勢で臨んでくれるなら、当該事業の良い点・悪い点が
  議論の成果として明確になりますが、後者の場合だと、
   ・組織のトップ(=閣僚)→政権党であり、組織のトップでもあるので、
                「恥をかかせるようなマネはできない」
   ・仕分け人役の国会議員 →組織上の上下関係はないが、やはり政権党なので、
                「恥をかかせるようなマネはできない」
  となり、事業説明のベクトルが反対の2方向に分かれてしまうので、訳のわからない
  説明になってしまうと考えます。


  この点は、後半戦が始まるまでに、前者の立場で統一してほしいと思います。


3.仕分け人の「議論の内容」について


  1で述べたように、今回の仕分け人は、「各々の分野で“一騎当千”の方」のようで、
  議論の内容も非常に参考になるものが多かったです。
  ただ、だからこそ、衆人環視の前での発言内容は、より一層研ぎ澄ましてほしいと
  思います(これは、大部分エールを送る気持ちを込めて)。


  上記の介護予防事業の仕分けの際、ある仕分け人の方が、限られた時間にも関わらず
  延々と予防医療の話をしていました。
  広く高齢者の生活を考える上では、医療と介護は当然結びつくものですが、この事業
  そのものを考える上では、「一緒にできる話」ではありません。
  勘違いなのか、わからないのか、或いは他の意図があったのか。


  いずれにせよ、誰が見てもピントがずれた議論は、仕分けに対する信頼感を低下させる
  恐れがあります。
  コーディネーターの、「仕分け人は一生懸命やってくれているから、その議論は尊重したい」
  との気持ちはわかりますが、「適切な対応してもらいたい」と率直に感じました。