「都心の小中学校の校庭に大量の木を植える」ことの是非について

今、豊島区では、「学校の森・植樹祭」と称する計画が進められています。


名前だけを見ると、よくある植樹の一種のようですが、この計画が“普通”
と違うのは、なんと、
 区内の全小中学校(区立)に、児童生徒1人当り1本の木を植える
というものです。
合計すると、約1万本が目標とのこと。


植樹自体はもちろん悪いことではありませんが、この計画は昨年後半に突然
発表されたもので、各学校は植樹場所を“供出”するために四苦八苦している
ようです(もちろん、「区長の肝いり」で決まった事業ですから、表立って
反対する学校はないようですが)。


さすがに一部の保護者の間で疑問の声が上がり、現計画の見直しを求める陳情
が今開かれている豊島区議会定例会に出されています。


この計画、以下の点から、問題があります。


1.ただでさえ狭い都心の学校の校庭に、新たに植樹場所を設けることは
  「正しい選択」か?


 今回の植樹は、今子どもたちが走り回っている校庭の真ん中に植えるわけ
 でありませんし、区でも、「隅っこの開いたところを活用する」として
 います。
 しかし、大分部は「校庭の一部」であることに違いはありません。


 私は仙台の校外の学校で小中学校時代を過ごしたのですが、東京に来て
 最初に感じたのは、「小中学校の校庭の狭さ」です。
 周りが既に住宅やオフィスなどで囲まれているので新たに拡張すること
 は難しいのですが、常日頃なんとかならないかと考えます。


 その点からすると、「まず最初にやるべきこと」は、校庭を少しでも
 拡げるために、
  ・現在の校庭からできるだけ障害物をなくす。
   *この場合、既設の記念碑や木なども“障害物”の一種とみなせます。
  ・建物をできるだけ合理的・効率的に建て、場所を“浮かす”。
   *都心部では、体育館やプールを校舎と“合築”する例はよくあり
    ますが、これを一層進める。
 などを検討・計画することのはずです。


 校庭内に新たに「植樹専用スペース」を設けることは、上記内容に反
 することと言えましょう。
 

2.木が育った場合、学校環境に支障はないか?


 たくさんの木が狭い学校の敷地内に育った場合、「緑が多くなるから
 よい」だけでは済みません。
 今懸念されているのは、
  ・不審者の格好の隠れ場所になるのではないか?
  ・建物に隣接して木が育つと、室内が暗くなるのではないか?
 などの点です。

 区では、「もしそうなったら伐ればよい」と言いますが、懸念材料を
 解消するのが先ではないでしょうか。


3.「学校教育にとって意義が大きい」と言えるか?


 区では、教育的意義について、
  ・環境教育になる。
  ・「植樹体験」ができる、格好の機会である。
  ・緑を大切にする心を育てる。
 などを挙げています。
 こういう面があることはもちろんですが、都会の中で人工林をつくった
 としても、所詮「バーチャルな自然ごっこ」に過ぎないのではない
 でしょうか。


 そんなことよりも、前回のブログに書いた「森の駅」などの“本物”を
 体験させる方が、よっぽど子どもにとってためになると私は考えます。


 さらに、今回の植樹では、「児童生徒1人当たり1本」と本数が多いため、
 「1平方メートル当り4本」という“過密”状態のため、
 「ちゃんと成長する木もあれば、生存競争に負けて“淘汰”される木もある」
 とのこと(区の説明)。
 これでは、「命を大事にする」と言いながら、「子どもに命が消えるのを
 見せる」ようなものではないでしょうか(子どものうちから「弱肉強食」
 を痛感させるという意味での、「命の教育」になるかもしれませんが)。