「大阪市の事業仕分け」から(2)

大阪市事業仕分け」からの、“気づき”の第二です。


職員等の「研修事業」について。
(今回では「保育所職員研修事業」「教職員の初任者研修」)


私も何度か事業仕分けを見てきましたが、研修事業は見たことがありません
でした。
この事業の見方について、幾つかの“着眼点”に気づきました。
(「今さら」の自己反省もありますが・・・)


1.何をもって「成果」とするか?


 今回の資料(事業シート)で言えば、「目指す成果」がこれにあたります。


 教職員初任者研修ではここに、
  「すべての研修において、アンケートの満足度の項目が、80%以上になる」
 と記されていますが、この考え方、ちょっと違うのではないでしょうか?
 「そもそもの目的」は先生の資質の向上のはずですから、研修を受けた先生
 が満足しようがしまいが、それは主目標ではないはずです。


 確かに指標を設定するのは難しいですが、「資質の向上にどう結びつくか?」
 という観点からの成果指標の設定が必要と考えます。
 そして、それに結びつかない研修なら、それこそ時間と金のムダと言えます。


 それに、研修後のアンケートで満足度を測定しているようですが、研修の実施
 に当る教育委員会は、受講する先生方の“評価機関”でもあるわけですから、
 たとえ無意味な研修であっても、「こんなもの無意味だ!」と正直に言う人間
 はあまり(ほとんど?)いないと思いますが・・・
 (=「たかが研修」で、組織や上司の機嫌をそこねるリスクはとりたくない)
 

 保育所職員研修の場合、この項目に、
  「〜食中毒などの事故がほとんど発生していないなど、一定の効果を
   あげている」
 とありますが、これもどうなのでしょう?
 「研修の結果としてこのような状態が生れた」と明確に言い切ることが
 できるのでしょうか?
 研修の意義を無理やり見出すために、都合のよい状況と無理に関連付けた
 とも考えられます。
   
 
 その意味でこの2つの事業は、自己満足的な研修とも言えるのではない
 でしょうか?


 でも、よく考えてみると、この種の「自己満足で完結した研修」は結構あり
 そうです。
 類似の事業の見直しポイントとして、頭に入れておく必要性を感じた次第です。


2.やり方(研修内容)は適切か?


 これについては、2事業とも、専門性が高いためか、今回はあまり議論され
 ませんでしたが、検証の余地が大いにあると思います。


 保育所職員研修の場合、説明の内容を聞いた限りでは、職員のレベルアップ
 というよりは「遵守事項・注意事項の伝達」の部分が多いような印象をもち
 ました。
 そうだとすれば、わざわざ金と時間をかけて現場の人間を呼ぶよりは、もっと
 合理的な「伝達手段」がいくらでもあるはずです。
  

 もちろん、この「やり方」は上記1と密接に関連するので、1が適切でなければ
 これもおかしくなるはずです。  
 特に、「受講者の満足度」を成果としている教職員研修の場合、必ずどこかに
 “歪み”があるはずですから、それを見直す意味で、第三者機関の検証などを
 一度やってみてもよいかもしれません。

 
 また、「本当にためになる研修か?」を図る一つの目安は、
   「自腹を切ってでも行きたいと思う内容か?」
 でもあると思います。
 今やっている同じ内容を、「有料の任意参加方式」で試験的にやってみて、
 参加者数を比較すれば、一発でこの点がわかると思います。


3.保育所職員研修について特に感じたこと


 今回は、主に追求すべきテーマが「民間活用がどこまでできるか?」でした。
 この点からみると、この事業が不要か否かは別として(現に、2人の仕分け人
 は「不要」と判断)、全部民間でやっても問題はなさそうです。
 (もちろん、本当に「研修が主目的」ならですが)


 事業の説明を私が理解したところでは、大ざっぱに言って、
  市立の保育所 → 市が“直営”で研修実施
  私立の保育所 → 市が「私立保育園連盟」に委託して実施
 のようです。
 この点、あまり議論の突込みが見られなかったのですが、市立と私立で保育園
 の業務内容・めざすべきサービスレベルにそれほど大きな違いはないはずです
 から、私立が委託で間に合うのなら、それを市立に拡大適用しても基本的に
 支障がないのではないでしょうか?


 事業の説明でも、保育所数の少ない市立の事業費(人件費がほとんど)が、
 私立の事業費(委託費)の10倍以上になっていますから、メリットは大きい
 と考えます。