「大阪市の事業仕分け」から(1)
これまでいろいろな自治体について、傍聴や自ら仕分け人にもなるなどして
見てきましたが、今回の大阪市の最大の特徴は、
「民間活用の適否について判断してもらいたい」
と、議論の一定の方向性・目標が決められていたことです。
議論の内容に条件や制限をつけることなく「そもそも論」から始められる
のが事業仕分けの特長なので、こんなタイプが適当かどうか、若干疑問を
感じつつ会場へと向いましたが、結論から言うと、違和感などはなく、
「なるほど」との“気づき”も幾つかありました。
何回かに分けてコメントしたいと思います。
*今回は事前に公表されていた資料がとても詳しかったので、往きの新幹線の
中で“予習”が十分にできました。
↓
http://www.city.osaka.jp/shiseikaikakushitsu/jigyou_shiwake.html
“気づき”の第一。
今回のような「民間活用のための仕分け」は、仕分け議論のツールとして考えた
場合、一つの有効なパターンになる可能性があると思います。
ある事業を仕分けする場合、「仕分けの論点」は幾つもあります。
特に仕分け人のレベルが上がるほど、「仕分け人の数だけ重要な論点が出される」
傾向があります。
これはこれで議論を膨らませる意味では意義があるのですが、事業仕分けは
一事業あたり30分程度しかかけられませんから、何とかこの議論の“拡散”
(決して悪い意味での“拡散”ではない)を、よい方向に絞っていけないか、
考えていました。
この視点から見ると、今回の「民間活用のための仕分け」は、論点の絞込み・
わかりやすい議論の流れの形成に有効だったと思います(私が見た対象事業
の多くで)。
大きな共通ポイントとして(あくまで私が感じた大ざっぱなポイントですが)、
・今の事業について、民間がやれない理由があるか?
・やれるとすればどの部分か、やれないのはどの部分か
・やれるとした場合、“受け皿”となる民間があるか?
・民間に任せて障害はないか?
そして、以上の議論の過程で判明した
・現行事業の不適切な点・改善点は何か?
さらに、
・その他の論点の提示と検証
最後に、
・以上を踏まえた結論は?
となっていました。
そこで、これを次のような一つのパターンにできないでしょうか。
順に、
第一論点:現行事業の分析と民間活用の可能性の検討
対象業務を極力分析的にとらえ、「どれができて、どれができないか?」
部分的な検証を行う。
この過程で事業のコスト・内容の不適切さ・非効率性等も改善ポイント
として、俎上に出してしまう。
第二論点:要不要の検討
第一論点で問題点を把握した上での議論・検討となるので、この
議論は割とスムーズに進むはず。
*従来は基本的にこの要不要を先にするような“雰囲気”の議論
も多かったと思いますが(私の認識)、第一論点と議論が混じる
可能性もあると思います。
その点で「先に細部を詰めてしまう」と整理がつけやすいのでは?
第三論点:その他の論点についての検討
第四論点:第一から第三の論点についての議論の内容を仕分け人間で確認
各自が結論を出す前に、チームとしての共通認識の確認する。
さらに、結論を出してから各自がコメントをするよりも、この段階
(結論の挙手をする前)で結論に関するコメントを述べてもらった方が、
共通認識の形成にはよいかも?
といった「基本形」とも言えましょうか?
*「民間活用」になじまない事業の場合は、第一論点の主テーマを「現行事業の
分析的検討」とすればよい。
もちろん、全ての対象事業がこのパターンで“攻めきれる”訳ではないでしょうが、
一つのパターンに乗っていければ、仕分け人の間での論点の拡散を防ぐことができ、
見ている方(傍聴者)にもわかりやすくなると思います。
「事業仕分けにおける効率的な議論」を行うためのヒントとして、こんな観点から
考えてみました。