東京23区の「骨太の議論」について

今年も今日で終わりますので、来年に向けての抱負(区議会の場では“宣戦布告”
的な意味?)も踏まえ、東京23区で語られている「行財政に関しての議論」に
ついて考えてみます。
*東京23区版「骨太の議論」として、来年は様々な機会に発信していくつもりです。


1.23区間で「都市間競争」をやることにどれだけの意味があるか?


 今年の副都心線の開業を契機として、様々なところで「都市間競争に勝つ」
 (豊島区の場合だと、“集客”の面で池袋が新宿・渋谷に負けないように
 官民がともにがんばるということを指しているらしい)ことが、行政の
 大きな課題として取り上げられています。
 「よそに負けるな!」「勝つんだ!」と繰り返されると、何となくその気に
 なりますが、果たしてこの議論、どれだけの意味があるのでしょうか。
 9月の議会での一般質問でも取り上げたのですが、私は大いに疑問を感じて
 います。


 東京23区の財政の仕組みは、他の市町村とは異なります。
 一般に、市町村では、企業や個人が納める法人住民税や固定資産税等がその
 まま「自治体の財源」となりますが、23区では一旦東京都が23区分のすべて
 を“吸い上げ”、総額の55%分を「各区の需要」に応じて配分します。
 いわば、「23区版地方交付税」みたいなものとでも言えるでしょうか。
 

 この仕組みの是非や経緯は別として、仕組みが現にある以上、23区という
 「狭い地域の一つのパイの中」で顧客を奪い合い、それによって勝ったと
 しても、結局のところ、上記の“配分”が減るだけではないでしょうか。


 このように基本的にプラスがないだけでなく、問題は、「勝つための公共投資
 を行うことのデメリットです。
 例えば、隣接するA・B・Cの3区が「都市間競争に勝つため」、A区は50億・
 B区は50億・C区は40億のインフラ投資等を行ったとします。
 基本的にメリットがないのは上記の通りですが、23区全体(この場合は競争
 相手の3区と考えてもよい)で見た場合、3区合計の140億円という大きな
 財源は、「メリットを生むことなく、“浪費”された」と言えるでしょう。
 もし「都市間競争」に使わなければ、教育・福祉等、様々な用途に使えた
 はずです。


 特に、経済情勢の悪化によって税収減が予想される今日、財源の使い道と
 しては(無理して使わないという選択肢も当然あります)、
  「メリットのないものには使わず、徹底的に有効活用する」
 姿勢が求められているはずです。
 

2.「財調措置があれば、(どの事業でも)やってもよい」は正しいか?


 現在、上記の「東京都からの配分」を「財調措置があった」(「財調」は
 「財政調整」の略)という言葉で表現しています。
 そして、ある事業を行う場合、
   「財調措置がある」
      ↓
   「区の持ち出しがその分少なくて済む」
      ↓
   「負担が少ない事業だから、やってよい」
 という“論理”(?)で基本的に説明されてきました。


 しかし、よく考えると、この“論理”、二重の意味でおかしいと言えます。


 1)「財調措置」も、出所は同じ税金!


  上記のように説明されると、「財調措置」が、何か「ラッキーなもらい
  もの」みたいな気がしますが、所詮は同じ税金であり、あるところで
  使われた分はあるところで減らされることになります(「効率的な執行」
  の議論はとりあえず脇に置いておきます)。


  ですから、「財調措置があるから負担が少ない」との考えはおかしい
  のであり、それを事業執行の判断基準にするのも適切ではありません。


 2)「財調措置」は、本来自分(=区側)のもののはず!


  現在、東京都と23区の間で、「事業と財源の移譲」の問題が議論されて
  います(この場合は「23区連合 VS 東京都」の構図)。
  東京都が現在もっている財源と事業権限を、「一般の市のように、区に
  よこせ」という議論です。


  その際、
   「もともと区は市町村と同じに考えるべきであり、従って、法人住民税
    や固定資産税なども、本来区側の“もちもの”である」
  といった観点からの主張がなされています。
  しかし、この観点、上記の、「財調措置がある(=東京都からもらう)
  から、その事業は負担が少ない。だからやってもよい」という論理と
  明らかに矛盾します。


  「もともと自分のものだ」と本気で考えているなら、「(その分を)もらえ
  てラッキーだ」とはならないはずです。