神奈川県寒川町の事業仕分けについて

hino-katsuaki2008-11-10

11月8日(土)、寒川町の事業仕分けに“仕分け人”として参加しましたので、
その立場も含めてのコメントです。


まず、この写真です。
前々日、対象事業に関しての“下調べ”に行った際、寒川駅の階段の掲示板に
貼ってありました(町の掲示板等への掲示はどこでもやっていますが、「駅の掲示板」というのは珍しいと思います)。
こちらも気合を入れて(?)臨む以上、町の本気度が幾分でも窺えて、
「よし、やるぞ!」という気にさせてくれます。


さて、当日の事業仕分けについて、印象に残った事業を中心に、以下、述べます。
*当日の対象事業は当町のHPにあります。
http://www.town.samukawa.kanagawa.jp/about/gyokaku/jigyousiwake/jigyousiwake.html


1.(1)文書館運営事業+(2)資料保存活用事業(⇒結果は(1)が不要)


 これは、寒川文書館に関する事業です。
 事前の資料(当日傍聴の方にも配布された事業シート。上記HPからもご覧になれます)を
 見てもわかるように、「こんなに利用者が少なくても、独立してやる必要があるのか?」
 と思わせる内容です。


 前々日の下調べで、図書館の4Fにあるここを訪れたのですが、立派な閲覧室
 (20〜30人は可?)に、私以外の利用者は一人だけ。
 当日の担当者の説明を聞いても、どうもこれが“常態”のようです。


 仕分け人の間でほぼ一致した論点は、
 「なぜ、図書館の事業の一部としてできないのか?」
 「独立してやる意味がどれだけあるのか?」
 といったところでしょうか。

 
 そもそも、図書館にも、レファレンスの担当者の配置や図書以外の資料の備え
 もあるのですから、同じ建物内で独立のスペースを構えて、別組織の人間が
 携わる必要はないはずです。
  「一旦専用のハードをつくってしまうと、それを維持する事が最大の目的に
   なってしまう」
 こんな感想をもちました。


2.観光協会補助事業(⇒結果は不要)


 前々日に寒川駅を訪れたとき、駅の中や周辺に、「寒川の観光案内」が何も
 ないのが気になっていました。
 こんな点こそ「観光協会の存在意義のアピール」になると思うのですが・・・


 まず、事前の資料で疑問に思っていたのは、成果指標にある「観光客数」の
 カウント方法です。
 まさか、町民と町民以外を区別する特殊な方法がある訳でもあるまいに、と
 思っていたのですが、なんと寒川神社への参拝客数だそうです。
 確かに同神社は町の観光資源でしょうが、観光協会とは何の関係もない(?)
 はずですから、これ自体が評価の基準になることはおかしいと言えます。
 この点は他の仕分け人からも指摘があり、
  「観光協会が余計な金を使って当るか当らないかわからないイベントを
   仕掛けるよりは、年間の一時期に集中して190万人も集まる寒川神社
   を中心に考えた方がよいのでは?」
 という趣旨の意見が出されました。
 説明の区職員からは、「神社は宗教法人だから・・・」との理由説明があった
 ので、何らかの“いきさつ”等があるのかもしれませんが、これも常識的に
 見て、仕分け人の意見が正しいように思われます。

 
 その他私が尋ねた質問は、
  「観光協会自体の収入・支出の状況はどうなっているか?」
 という点です。
 他の自治体でもよくあるのは、かっこいい事業名がついているのに、実態は
 「○○協会への補助」(=その協会を維持させるのが補助金の目的になって
 しまっている)というケースで、その点を聞いた訳です。
 答えは、「観光協会の全歳入の中、補助金が75%」だそうです。
 私は、これはちょっと問題があると思いますが、これを聞いた一般町民の
 方がどう判断されるか、是非伺ってみたいものです。


 観光協会の事業として従来行ってきた花火大会も、効果が小さいので縮小。
 次のネタ探しをしているというのが現状のようなので、仕分け結果は、全員
 一致で不要となりました。


3.会場の反応について


 私はこれまで何度も事業仕分けを見てきましたが、
  「仕分け自体の手法をどうするか?」
 という点の他に、
  「会場に来られた傍聴の方をどう巻き込んでいくか?」
 という点も今後の重要な課題だと考えています。


 その点、たまたまかもしれませんが、今回の傍聴者の方は大人しかった(?)
 と言えるかもしれません(別に、場外乱闘を期待している訳ではありませんが)。
 私の班のコーディネーターは何度か会場に問いかけを試みましたが、ほとんど
 反応がなかったのは、正直驚きでした。


 実は、私はこの点を考えて、自治会活動支援事業の仕分けの際、説明資料の
 改善項目として、
  「〜自治会の管理運営の自立を支援する」
 との記載があったので、
  「こう書かれているということは、現状では自治会は自立していないと見て
   いるのでしょうか?」
 と質問して、傍聴の方を“挑発”してみました。
 しかし、コーディネーターからの問いかけに反応はなく、少々期待外れでした。
  *賛否両論が出て議論が沸騰すれば、今後の町のためになるはずです。もしか
   したら、そんな点を期待してこの事業を今回の仕分けに出してきたのでは?
   そうだとしたら、これを選んだ担当の方は“偉い”です。


4.仕分け後、仕分け人の間で出された意見


 いろいろありましたが、一つだけ言及しておきます。
 「仕分け人自身の議論の進め方」の問題についてです(反省点)。


 それは、
  「結論を明確にした上で議論を進めるべきだ」
 という点です。


 どの仕分け人の方も事前準備をした上で臨んでいる訳ですから、一定程度
 の結論をもった上で議論を始めているはずです。
 しかし、結論を明確にしないで質問をしていると、
  「何のために聞いてきいるのかよくわからない」
 という印象を、説明の職員だけでなく、傍聴者の方も抱くのではないか、
 ということです。


 短時間の議論で効果を生み出すためには、日常生活でもあるように、
  「意図を明確にした上で相手と話をする」
 のが適切なやり方です。この点は自己反省としても強く認識しました。


 もっとも、議論の途中で結論が変わることもあるので、
  「その“変化”も明確にわかるようにしたら面白いのでは?」
 との意見も出されました。


 例えば、今回の最後の事業である「企画調整事務」などはその典型です。
 事業の内容は、バス会社の既存路線廃止を防ぐため、町がお金を出して
 バス転回場を設けるというものです(資料の内容)。
 仕分けに臨んで説明を聞くまでは、私は、
  「これがないとバスがなくなってしまう。事業の改善の余地はある
   だろうが町がお金を出す必要はあるだろうな」
 と考えていましたから、上記の「結論の明確化」で言えば、「町でやる
 事業。要改善」の“札”でも掲げていることになります。
 しかし、説明を聞いてみると、「転回場がなければ撤退する」という条件
 を突きつけられた訳でもなく、どうもバス会社の利便性の改善のために
 この転回場を設けたきらいがあります。
 こう考えたので途中で考えが変わり、最終的な結論は「民間で実施すべき」
 (=この場合は、バス会社が自分で用地を確保してやるということ)に
 変わりました。
 つまり、挙げている札が、「要改善」から「民間」に変わったということです。
  *因みに、これについては、私だけでなく、仕分け人が全員一致で
   「民間」を結論としました。


 このように、仕分け人の考えている結論が常にわかるようにしておけば、
 議論の流れとリンクして、非常にわかりやすく面白い形ができると思います。