「議会による事業仕分け」は可能か?

私が事業仕分けを知るようになって3年ほどです。


最初は「見る」だけだったのですが、徐々に「意見を出す」に変わり、今年
7月には町田市の事業仕分けで「仕分け人になる」にまで“昇格”(?)させて
いただきました。


いろいろな方のお話を伺いましたが、当初から一つの課題として言われていた
のが、
 「これは本来、その自治体の議会がやる仕事なのではないか?」
という点です。
確かに私もそう思いますが、果たして今の議会でそれが可能か、考えてみたい
と思います。


10月22日に、決算委員会も含んだ豊島区議会第3回定例会が終わりました。
今回、私は決算委員ではないため、上記の視点から観察・検討しました。
結論から言うと、「無理」でしょう。


現在の議員のレベルがそれに相応しいかどうかは別として(そもそも、議論や
思考能力等の面で欠けている議員は、初めからこの種の検討の“対象外”です)、
その理由は、


1.多くの議員は「政党や団体」を背負っているので、それから離れた客観的
  な議論は無理!


   ご承知のように、大部分の議員は「選挙で当選する」ために、政党・
   団体等の組織票をあてにしています。
   通常、それらの政党・団体は、「客観的な正しさ」とは別の「主義主張」
   を持っているのであり、そこから選出された議員は、その主義・主張を
   自治体の“発言”の場で主張する義務を負わされています。
   ですから、事業仕分けのように、「客観的・合理的な観点からどう
   考えるか?」という議論を展開することは期待できません。
    *ただし、自画自賛ではありませんが、私のように、そのような
     “しがらみ”のない議員も、少数ながら存在します。
     そのような議員だけで「仕分けグループ」を構成することができれば、
     十分可能でしょう。


2.多くの自治体では、「自分は、『首長与党』だ!」という議員が多数を占めて
  いる以上、どうしても「行政追認」になりがち!


   例えば我が豊島区議会。
   36人中、28人が、「自分は首長与党だ!」と自分で言っています。
   (本当の話。“実質”与党ではなく、一般質問等で、“自称”しています。
    政党別では、自民・公明・民主・社民・生活者ネットがこれらの
    “お仲間”です)
   当たり前ですが、首長与党ということは、基本的に首長の考えに反対しない
   ことであり(特に豊島区議会はその傾向が強い)、現状の事業をどう考えるか
   に当っても、「追認」を前提とした議論がせいぜいにならざるを得ません。


3.「地方議員の仕事は、首長への要望だ」と考えている議員が多いので、「仕組み
  を変える」という議論にまで発展しにくい!


   上記2とも関係しますが、多くの地方議員は、「一部の個別具体的な住民の
   要望を行政に伝えることこそ、地方議員の本来の仕事だ」と本音の部分で
   思っています。
   もちろん、私だって、身近な知人等が正当な行政への要望を抱いている時は、
   それをどう実現させるか、のために行動します。
   しかし、地方議員はそのような「御用聞き的な動き」が本来の仕事でない
   はずです。一般的な行政の仕組みをどう考えどう変えていくべきか、これを
   考えるのが本来の仕事ではないでしょうか。
   この辺りの誤解をもった地方議員が多い以上、事業仕分けのめざす「事業の
   適切なあり方」を模索する議論は、議会の中では無理と考えます。


もし議会が関わるとすれば、「場の設定」でしょうか。
これまでの事業仕分けのほとんどは(全部かも?)、「行政側がやる」といった時
に行われてきました。
裏を返せば、行政側の決断がなければできないということです。
行政が消極的な場合に、「議会が主導して事業仕分けを行い、行政側をその場に
呼ぶ」というスタイルが定着すれば、議会が有意義に関わった事業仕分けが数多く
展開されると思います。