「平成20年度・豊島区予算」を考える

先週で予算審議を含めた第一回定例会が終わり、私は20年度予算案(一般会計)
に反対しました。
*私の意見は、http://www.hino-katsuaki.com/opinion/kd_diary.html


反対したのは、来年度予算そのものというより、「豊島区の将来像」として示された
「未来戦略推進プラン2008(案)」に対して大いに不安と懸念を覚えた
からです。
今後の豊島区の政策(⇒「どこに」「どれだけ」お金をかけるか?)は、この
案に沿って進められることになるので(もちろん、この案は、例えば5年後の
“予算”を示しているものではありませんが、議会でこの案に反対がないこと
になれば、当然この方向が「認められた」とされます)、見捨てておく訳には
いきません。


以下にポイントを書きますが、要は
 「区があまりにも過大な投資をする恐れがあるのではないか?」
ということです。


*「未来戦略推進プラン2008(案)」は、
http://www.city.toshima.tokyo.jp/publiccomment/anken/19-08.html

その中の主な項目は、以下のA)〜D)
 A)文  化:http://www.city.toshima.tokyo.jp/publiccomment/anken/19-08/miraiplan2008-an-04-1.pdf
 B)健  康:http://www.city.toshima.tokyo.jp/publiccomment/anken/19-08/miraiplan2008-an-04-2.pdf
 C)都市再生:http://www.city.toshima.tokyo.jp/publiccomment/anken/19-08/miraiplan2008-an-04-3.pdf
 D)環  境:http://www.city.toshima.tokyo.jp/publiccomment/anken/19-08/miraiplan2008-an-04-4.pdf


1.「新ルネサンス構想」


 豊島区の将来構想のまとめ・中心として示されたのがこの構想です。
 説明箇所や構想の全体図を見ると、「バラ色の将来」みたいですが、個別の
箇所を関連付けて見ていくと、「本当にこんな施設をつくってよいの?」とか、
「本当にこんなことにお金をかけてよいの?」といった疑問が次々と出て
きます(少なくとも私にとっては)。


 まず、C)のP3(通しではP61)に、構想通りの「都市づくり」のための大規模
な開発計画を進めるために、「都市再生特別措置法上の、緊急整備地域の指定
を受けることをめざす」とあります。
 この地域指定を受けるには、「一定の地域内に大きな開発計画が複数存在する」
ことが一つの要件とされており、区では、C)のP4・5(通しではP62・63)の地図
にある通り、
 1)旧日出小を中心とした地域(新庁舎の候補地)
 2)造幣局を含む周辺地域
 3)現在の庁舎の地域(新庁舎を建てればこの地を開発するので)
 4)池袋西口の駅前地域
 5)池袋駅(「東西デッキ」などで“開発”)
等を想定しています。そして、地域指定を受ければ、容積の緩和や民間の投資
を呼び込む制度上の優遇が期待できるとしています。
 しかし、この「都市再生緊急整備地域」、あくまで「民間」が主導する開発に
対して“指定”されるものです。前々内閣の「民間活力を生かす」という方針で
創られた典型的な制度の一つです。


 ところで豊島区はというと、上記1)〜5)の中で、「民間主導」で具体的な
計画が進められているところはありません。このような状況で本当に「〜地域指定」
が受けられるのでしょうか?
 さらに問題なのは、この指定を受けられないだけならまだいいのですが、
「どうしても地域指定を受ける」ために、区が上記1)〜5)の地域に対し、
「区がお金を出して開発事業を展開する」ことになる恐れはないか、ということ
です。
 「まさかそんなこはない」とお考えの方もいるかもしれませんが、今度の
プランでは、「○○施設構想」みたいなのが見え隠れしており、私の懸念は
的外れではないと考えます。
 これについては、この後で個別に挙げていきます。


2.「インキュベーション施設」
 

 C)のP14(通しではP72)に「としまものづくりメッセ構想」というのがあり
ます。
 この構想自体を否定する気はありませんが、この中に「起業者のための
インキュベーション施設を設置」とあります。
 目的は、「起業する人間に、立ち上げの数年(?)、安くオフィスを提供する」
ことで、他の自治体では、廃校となった建物を活用する例があります。
 ところが、C)のP4・5(通しではP62・63)の地図では、上記2)の地点に類似の
記載があります。この2)は区の土地ではないので、ここにインキュベーション
施設をつくるとなれば、豊島区が土地か再開発ビルの権利を買って自ら施設を
つくる必要があります。
 もちろん、予算委員会の中での区の答弁は「今後の検討事項だからわからない」
とされましたが、私には「手回しよく既に計画しているのでは?」と思えてしまう
のですが・・・


2.「総合アートセンター」


 A)のP3(通しではP43)に「総合アートセンター」との記載があり、私は最初
「あくまで概念的なものでは?」と思っていたのですが、どうもそうではない
ようです。
 現在区内には、旧朝日中学校の校舎を活用した「西巣鴨創造舎」というもの
があり、廃校の有効活用として一部で注目されているようですが、どうもこの
ような“施設”を「新たにつくる」ようです。
 今回の委員会質疑を通して私が理解した区の文化・芸術施策というのは、
次のような“重層構造”になっているようです。
  一つ目:区民が“高尚な”芸術を見るところ(「あうるすぽっと」等)を
      つくる
  二つ目:見るだけででわからないので、一流の芸術家の活動に「触れ合う」
      場所をつくる(西巣鴨創造舎→総合アートセンター)
  三つ目:各自が実際に文化・芸術活動をするところをつくる
      (現在の「地域文化創造館」など)
 C)のP4・5(通しではP62・63)の地図には記載がないのでどこになるかはわかり
ませんが、1の「〜地域指定を受ける」ために、「上記1)〜5)のどこかに
この施設を計画するのでは?」と考えるのは、私の考え過ぎでしょうか?


3.「健康センター」


 A)のP7(通しではP55)に「池袋保健所に隣接した健康センター構想の実現
を図る」と明記されていますので、これも明らかに「施設をつくる」ので
しょう。
 ここには、「施設のイメージ」として様々な機能が挙げられていますが、
現在の保健所や保健福祉センター・地域包括支援センター・健康診査センター
の他に「なぜ新しい施設が必要なのか?」、私には理解できません。
 上記3)の地域の開発計画を進める上では、「具体的な計画」として寄与する
のかもしれませんが・・・


4.「風とみどりの道」構想


 D)のP3(通しではP75)に、環境政策の一環として「風とみどりの道構想」と
あります。
 単なる“努力目標”ならいいのですが、この下の「事業のイメージ」を見ると、
どうも「具体的な建設事業」になるようです。
 要は、
  「夏の暑い日に都市の中を歩くと暑くてかなわない。歩いて涼しい道づくり
   を進め、環境都市として、注目を集めるようになりたい」
のでしょうが、これを具体化するとなると、かなりの“重装備”が必要になるの
ではないでしょうか?
 道路全体を木で覆い尽くす訳にはいかないので、もし「真夏の暑い時に効果を
上げる」ことを考えれば、P75の保水性建材を歩道上に敷き詰めるぐらいしか手が
ないように思います。しかも、並みの保水性建材ではすぐに中の水がなくなるので、
「効果を持続させる」ためには、常に通水が確保される建材や保水の力が抜群に
大きい建材が必要です。そうなると、「普通の道」に比べ、敷設コストが高くなる
はずです。
 C)のP4・5(通しではP62・63)の地図を見ると、この「〜道」は相当長い距離が
想定されているようなので、全体の敷設コストは相当なものになると予想できます。


5.「LRT路面電車)」


 前々から言われているものです。
 池袋駅から雑司が谷方面までの1キロ弱の距離を走るだけですが、線路の敷設・
車両購入・維持費などを考慮すると、「○○億円はかかる」と言われています。


【まとめのコメント】
 上記1を具体化する中で“建設”されるのが2〜5ということになります。
 もちろん、まだ「具体的な建設計画」とはなっていませんが、これだけを全部
合わせると○○○億円ぐらいになるのではないか、との予想は十分に可能です。
 税収の好調な現在ならよいのでしょうが、この状態がいつまでも続く保障は
どこにもありません。
 必要な投資は思い切ってなされるべきですが、「過大な投資」は極力控える
べきと私は考えます。