学力論議で語るべきもう一つの「学力」

昨日、土曜放送のNHK番組「日本のこれから『大丈夫ですか?日本人の学力』」
の録画を見ました。


議論の内容はともかく、ヤラセじゃないかと思うほど、いろいろなキャラクター
が登場して、盛り上がっていた感じで結構面白かったです。
難を言えば、最前列の有識者3人がちょっとしゃべり過ぎでは(藤原氏は別)?


さて、様々な観点から学力観が語られましたが、曖昧なままにあまり語られ
なかった「学力」があります。
それは、「教師の学力」です。
生徒の学力を問題にする以上、教える側の学力も今のままでよいかどうか、
本来なら真剣に議論する必要があるのではないでしょうか。
「先生は皆優秀だ」と考えている人など誰もいないのですから、そろそろこの
問題も、“建前論”を脱して、現実的に議論していくべきです。


私は以前、小中学生相手の塾や大学受験の予備校で教えていたことがあります。
予備校の担当科目が主に現代文だったからでしょうか、「教える側の学力差」
について、非常に考えさせられることがよくありました。
現代文(国語)の場合、「知識の量」でごまかすことができにくいですから、
「言語から論理的に理解する能力」の差が如実に出ます。
そして、この能力、実は大学受験だけでなく、小中学生相手の国語の授業でも
本質的に必要となります(もちろん教える側の“素養”として)。


小中学生向けの塾にいた頃(大手の進学塾)、小中学校の教師経験者や
「この道○○年」の業界のベテランも多数いましたが、この「言語から論理的
に理解する能力」を意識したことがないとしか思えない人間がなんと多かった
ことか。
確かに中学高校受験の文章は易しいと言えますが、それは基本的にボキャブラリー
の面での話であり、「本質的な文章理解」には、この能力が必要になります。
だから、この能力に欠けている“教師”は、意外に“正解”がわからないことが
多い。
よくあったのは、文章の本論部分と例示の部分を取り違えるケース。
例示の部分に「立派な言葉」が使われていたりすると、見事にだまされてしまう
ようです。
生徒も一緒にだまされてくれれば、まだ「罪は軽い」(?)のでしょうが、
生徒の方が「本当の正解」に気づいている場合は「重大な罪」になります。
塾側が講師に示してくる解答マニュアルでこのような“誤答”が時々あったので、
私の場合、何時間かかけて「解答を直す」交渉をたびたびやりました(もっとも、
塾にも面子がありますから、「そういう正解もある」という決着で終わりますが)。


私は学校の先生の「学力診断」をやったことはありませんが、「塾の先生は
学校の先生より劣っていることはない」という極々常識的な推論からすると、
上記の経験からして、学校の先生の学力には大いに問題があると言ってよい
でしょう。


ではどうするか?
手始めは、「個々の学校の先生の学力を測定する」ことから始めるべきです。
どんなテストをすべきかですが、まずは大学受験の問題などがよいのでは?
「いわゆる難関大学」の問題は難しいでしょうから、センター試験の問題が
適当かもしれません(とりあえず国語の場合で考えます)。


センター試験の問題で全ての先生をテストしたとして、“合格基準”は何点
ぐらいになるのでしょうか。
 ・高校の先生は○○点
 ・中学校の先生は上記の−○○点
 ・小学校の先生はさらに−○○点
などとするのが妥当な考え方なのかもしれません。
高校の先生の「○○点」の具体的数字については、一度「全国一斉学力テスト」を
やってみないと現実的な目標は出せないのでここでは示しません。
*念のためお断りしておきますが、この「センター試験の活用」は、あくまで
 学力測定を目的にしたものです。当たり前ですが、これで「先生の能力」の
 全てが決まるとは思いません。他に、人間性指導力・プレンテーション
 能力など、いろいろな能力が求められるでしょう。
 ただ、「最低限必要な学力」は先生に課されてもよいのではないでしょうか。


実は、10年ぶり(?)に今年のセンター試験の問題を全科目やってみました
(もちろん制限時間内で。科目は英、国、数?A、数?B、地理B、現代社会、
生物、化学。事前準備なしの「ぶっつけ本番」です)。
国語以外はまさに受験時以来、地理と化学に至っては、受験時に選択して
いませんから、高校以来となります(自身の受験では日本史・世界史ですから、
現代社会も高校以来でしょうか)。
結果は“悲惨”でしたが、「教育の問題」を考える上では大いに参考になった
と考えています。
*余談ですが、上記の中で興味深かったのは「現代社会」です。
 なんと、100点満点で91点でした。
 「俺はよくがんばった」と素直に自画自賛したいところですが、この結果
 にはもっと深い意味があるような気がします。
 この科目については、「コツコツまじめに参考書などで勉強する」よりも
 もっと効率的なやり方があるのでかもしれません。
 今は、この面を追求するのが“本業”ではありませんので、この面での
 “イノベーション”は予備校の先生にでも任せたいと思います。