「地域の災害弱者」にどう対応するか?

昨日のNHKクローズアップ現代「災害弱者を守れ・命のリスト」で、各地の
「災害時要援護者」対策が紹介されていました。


この番組でも出てきた豊島区の長崎四丁目町会は私の属する町会であり、
私も町会の一員としてあの取材の場面にもいました。
 *豊島区では、要援護者の中、区を通じて自ら町会に依頼した方のみが
  今回の取組みの対象となっています。
番組では、「さあ、やるぞ!」といって取り組む姿だけが強調されていました
が、実際の“運用”に向けてどうするか、町会内部で様々な議論があり、
“解決”された訳ではありません。
主なものはと言うと、
1)要援護者の「個人情報保護」にどこまで配慮するか?
  区の“マニュアル”では、原則として(?)、1人の要援護者について
  町会関係者2人だけが当該個人情報を把握できることになっています。
  しかし、実際に災害が起きた場合、町会関係者(当町会では、役員等
  を含めて、今のところせいぜい30人ぐらいでこの事業に当たらなけれ
  ばなりません)の誰がどこで何をしているかは予測できないのであり、
  その意味から、「町会全体として対象を把握している」といった状態の
  方が望ましいのではないでしょうか?
2)町会担当者の責任をどう考えるか?
  今回、要援護者の支援に当たる町会の面々は、あくまで「善意のボラン
  ティア」です。
  ですから、災害が起きた時は、ある程度「自分のこと」を犠牲にしても
  支援に当たる覚悟が求められます。それはそれでよいのですが、実際の
  場面でせっかく支援に当たったとしても、要援護者の中には医療や介護
  の措置が必要な人もいるし、一緒に避難する途中で身体等にダメージを
  負う人が出てくるかもしれません。
  避難後や避難途中でこれらに起因する問題が発生した場合、実際に
  関わった町会の関係者はどうなるのでしょうか?
  「善意のボランティア」の原則からすれば何も責任はないのでしょうが、
  この辺もはっきりさせておく必要があります。
3)「支援者」をどう確保するか?  
  番組でもあった通り、町会で実際に動いている(=役員等)のは高齢者が
  中心です。しかもその人数が少ないときています。
  今回、長崎四丁目町会の要援護者は6名だけですが、これ以上の増加に
  対応するのは非常に難しいとみられています。
  新たな支援者を確保しようにも、町会自体が全世帯をカバーしている訳
  ではないので(豊島区全体では町会の加入率は50%超)、“新戦力”
  の補充はなかなか難しいのが現状です。
4)どの要援護者にも同じように対応することができるか?
  上記とも関係しますが、要援護者として助けを求めてこられた方の中には、
  当然(?)、町会に加入していない方も含まれてきます。
  もちろん、“差別”はいけないことですが、人間の一般心理として、
  町会に協力的な方とそうでない方を全く同じように意識するのは正直
  言って難しいのではないでしょうか?
  「任意のボランティア団体」である町会の自由意思と義務の問題と言え
  ます。


では、以上の問題に対応するにはどうすればよいか?
私は、町会が単なる「任意団体」ではなく、何らかの形で
  「公的性格を付与された団体」
に“昇華”する必要があるものと考えます。
ただ、それに当たっては、一部の町会などに残る伝統組織の負の側面を
清算していく必要があります(特に、政治・宗教に関わる問題は、従来から
そう言われていると認識しています)。


災害弱者対策だけでなく、様々な面での「地域の再生」には、町会・自治会等
の“昇華”(もともとの形を変え、上位の姿に変わっていくという文字通りの
意味)が大きな課題になると考えます。