「認知症」をどう考えるか?

12月17・18日に放送されたNHKスペシャル認知症」を見ました。


認知症については、数年前から先進的な取り組みに関わってきたこともあって
(ご参考:http://www.hino-katsuaki.com/report/report2005-1.html、これ
については、豊島区だけでなく、他の自治体への導入にも“一役買って”きた
つもりです。今後はそちらの方で「大きな花が開く」かもしれません)、少々
“わかった”気になっていましたが、最近別の分野の自治体施策に注力して
いたこともあって、正直ちょっと“さぼって”いた感があります。
この番組を見て、認識を新たにするとともに、大いに刺激を受けました。


1.認知症にとっての“治療”とは?

 認知症施策に関わって感じたのですが、認知症には基本的に“治療”に
 相当するものがありません。
 原因はある程度わかってきたものの、「風邪薬」「傷薬」「手術」に
 相当する明確な“治療法”がない。
 従って、「よくなる」「改善する」とい表現はあり得ても、「治る」
 「治療する」とは言えない。
 *一部にこのような「治療」的表現を使う方もいるようですが、それは
  適切ではないと私は考えます。
 これは、医療や介護保険上の扱いにも見られることで、身体的な衰えに
 ついては、その機能を回復する「リハビリ」が制度上ありますが、
 認知症については、「リハビリ」という概念が基本的にありません。

 しかし、今回の番組では、従来のアリセプト以外の新薬で、この“治療”
 に該当するものの開発が進められ、アメリカでは臨床試験でもかなりの
 レベルまで来ていると紹介されていました。
 手術を伴う別の方法では、脳細胞の「再生」も可能のようです。
 (これは、元の細胞が復活するのではないから、“蘇生”ではないの
  でしょう。でもこのような効果の可能性については、以前から“予言”
  されていました)  

 近い将来、認知症に“治療”が登場する可能性は大きいと感じました。


2.有効な対策とは?

 しかし、“治療”が現れたとしても、よくはなっても、一度認知症
 なったら「完全治癒」はまず無理のようで、それはこれまでと変わら
 ない。
 そうなると、有効な対策は、「早期発見」「早期治療」となります。
 番組でも紹介されていた通り、あらゆる方法・機会を駆使して、
 “異常”を見つけ、それを様々な“治療”法に結びつけていくのが
 効果的と考えられます。
 そして、そのためには、医者や役所等の人間ばかりでなく、地域の
 「ご近所の眼」も必要です。

 これらが仕組みとして連携できる「制度」を構築できれば、認知症
 に起因する介護・医療・福祉分野の財政支出もかなり抑制できるかも
 しれません。


3.個人的な教訓として考えたこと
 
 「自治体施策をどうつくっていくか?」に関わっている自身として
 改めて痛感・反省したのは、「制度づくりに関わる人間は、やはり
 その分野の最先端の状況に通じていなければならない」という点
 です。
 およそ制度や仕組みというものは、ある目標・見込みに向かって
 最も合理的・効率的に「状況をつくり出していく」もののはずです
 から(少なくとも私はそう考えます)、その目標・見込みにあたる
 部分が間違っていたり、欠落していたのでは、その制度や仕組みは
 意味をなさなくなります。
 その点で、ちょっとした“さぼり”を反省しています。