NHKスペシャル「硫黄島玉砕戦」を見て
昨日(8/7)、NHKスペシャル「硫黄島玉砕戦」を見ました。
硫黄島は、太平洋戦争最大の激戦地の一つとされ、昭和20年、圧倒的に優勢な
米軍を迎え撃って、日本軍が玉砕した小笠原諸島の島です。
番組案内では、これまで詳細が語られてこなかった硫黄島の戦いについて、
「初めて真実が明らかになる」とありました。
硫黄島については、昨年、次の2冊の本を読んでいます。
①「散るぞ悲しき」(梯 久美子、新潮社)
②「名をこそ惜しめ 硫黄島 魂の記録」(津本 陽、文藝春秋)
①は、硫黄島の最高指揮官である栗林中将に焦点を当てて書かれたものです。
「人間 栗林」が中心に描かれ、「感涙のノンフィクション」との宣伝文句
通り、なかなか読ませるものがあります(私の感想)。
今年になってから、様々なところで話題になっているようです。
②は生還者の証言をもとに、硫黄島戦の詳細を“リアル”に描写したものです。
“リアル”なのは戦闘状況の描写だけではなく、人間としての欲求・感情など、
「軍隊組織以前の、人間の問題」とでもいうべきものに及んでいます。
実は、この2冊を読んだきっかけは、3年前(?)の正月の新聞に掲載された
津本氏の文章によります。
その文章中、津本氏が、
硫黄島の兵士たちが、水も食料も乏しい中でなぜあれだけがんばれたのか、
非常に関心がある。生き残りの方がどんどん亡くなって行く中、これを
書き残すのが自分の務めだ。
これを書くことで、日本人の大きな特質(プラスの点)を明らかにしたい。
*以上は、津本氏の文章に対する日野の印象の要約です。この通りに
書いてあった訳ではありません(と、思います)。
と、あったので、②が刊行されるのを今か今かと待っていました。
しかし、やっと出された②は、そんな津本氏への“期待”とはちょっと異なり、
各兵士の個人的な人間像・悲惨さ等が中心になっており、私としては、ちょっと
“期待外れ”でした。
という訳で、今回の番組、この“期待外れ”を埋める何かがあるのかどうか、
これを知りたかったというのが視た最大の動機です。
この点から言うと、今回の番組は、②の流れに近い形でつくられていた感じ
がします。
でも、全く余計なお世話ですが、津本氏の“苦渋”も感じることができた気が
します。
全くの推測ですが、3年前に私が新聞記事を読んだ時点では、津本氏は、硫黄島
からの生還者から、「使命感」「責任感」などの、「日本人の美質」(?)を、
エッセンスとして抽出しようと考えていたのではないか。
ところが、生の話に当れば当るほど、それが描けなくなってきた、そこで
状況描写的なもので終わらざるを得なかった。
こんな感想を抱いています。
当たり前のことかもしれませんが、一つの事象をどういう“価値観”で評価する
か、特に「戦争」が関わった場合、難しいとうことが改めてわかった気がします。