浅野前宮城県知事らの動き②

昨日お知らせした「浅野前宮城県知事らが全国市民組織結成!」の
続報です(下記の記事は5/3の河北新報配信記事より)。


内容のポイントは(以下は、日野の“解釈”を含んでいます)、
①組織名称:「日本市民会議」
②活動内容
  ・今秋の自民党総裁選に合わせ、衆院の解散・総選挙を訴える。
   そして、各政党のマニフェストを分析・評価する。これらによって
   国民の政治に対する関心を高めていく。
  ・組織に市民を巻き込む(=市民を結び付ける)道具として
   インターネットを駆使する。市民の発言・提言の場として活用する。
③政治的パワー獲得の方法
   国会議員を動かさなければものごとは進まない。国会議員を
   動かすために、「町村議員」(記事中ではこういう表現ですが、
   末端の地方議員である「市区町村議員」をさすと思われます)を
   動かしていく。
   国会議員の選挙等の基盤になっている地方議員が影響力を行使
   するようになれば、国会議員も動かざるを得ない。


やはり、「政治的な影響力」をポイントにされているようであり、この点は
大いに共感できます。
特に、地方議員(都道府県議を除くのがポイント)に焦点を当てている
点は注目できます。


地方議員には無所属が多いこと、政党に所属していてもそれにとらわれ
ない動きをすることが多いこと(よいか悪いかは別として)、等を考えると、
「国会議員の当選の基盤」になっている地方議員を“啓発”“覚醒”して
取り込むことは、「国への政治的影響力行使」に結びつく有力な新手法
と考えられます。


そしておそらく次のような地方議員改革・市民の意識改革をセットにして
考えているのではないでしょうか。
以下は、日野が期待とともに推測した浅野氏の狙いです。


1.地方議員の改革
   現状の、「行政への口利き」「狭い地域利害の代弁者」といった
   役割から、「地方自治のあり方から国政を考える」という役割への
   転換。
   そして「そのような役割を担える意欲・能力を備えた人間を
   地方議員に!」という、人の転換。
    ⇒口利きと地域エゴにしか関心も能力もないような地方議員を
     駆逐していく。


2.地方議員のポジションの転換
   現状では、特に政党所属の地方議員の場合、
   「国→都道府県→市区町村」という、上位下位のレベルで位置づけ
   られることが多い(もちろん、そういう意識など毛頭ない議員も多い)。
   これに対し、「浅野構想」が進むと、地方議員は、「国政政党に所属
   する」というより、「地方の立場でどの国政政党が適しているかを
   判断する」という役割に変わるので、地方議員の無所属化が進んで
   ほとんどが無所属になり(国政政党レベルでの)、かつ、国政の政権
   決定に至るイニシアティブを握ることになる。
   これは、議員の中での上下関係の転換と言える!?


3.地方政治と国政の位置づけの転換
   上記の地方議員の動きに市民が「地方の立場」で連動すれば、
   国政選挙でも、政党が勝手に選択肢を提示しあう今の状況から、
   政治的影響力を握った地方議員・市民が政党の選択肢の提示
   自体に影響力を及ぼせるようになる。
   これは、国と地方の力関係・上下関係の転換に結びつく。  


以下、記事の内容
 ↓
分権改革へ市民と連帯 浅野史郎宮城県知事に聞く
ネット駆使議論盛り上げ


 梶原拓・前岐阜県知事と浅野史郎・前宮城県知事が共同世話人
となり、市民レベルで地方分権改革を支える「日本市民会議」が6月、
結成される。「闘う知事会」から「闘う市民会議」へ。分権改革について
発言を続ける浅野氏に、狙いと展望を聞いた。


 ―設立の経緯と目的は。
解散総選挙訴え>
 「発案者は梶原氏。わたしにも知事時代の反省があった。
三位一体改革では国と地方が権限、財源をめぐって綱引きをし、国民
には関係ない話と受け取られてしまった。本物の民主主義をつくるため
の改革なのに、有権者を巻き込む仕掛けが足りなかった」


 ―具体的な活動内容は。
 「今年秋に自民党総裁選があるが、新しい首相は市民の手の届かない
場所で決まってしまう。市民会議は衆院の解散・総選挙を訴える。その際、
市民が政策の違いを理解する手助けとして、各政党のマニフェスト
客観的に分析、評価する。これで新首相の正当性が高まるし、国民の
政治に対する関心も高まる」
 「市民を結び付ける道具としてインターネットを駆使する。知事会など
地方6団体はあっても、分権改革を求める市民には発言する場が
なかった。ネット上で市民会議の議論を繰り広げ、広く提言する場として
有効活用したい」


 ―分権改革の今後をどう見るか。
<政治力が不可欠>
 「国会議員の多数を得て法律化しなければ改革は進まない。梶原氏
は国会議員を動かすための方策として、町村議員の重要性を訴えて
いる。地方6団体で一番大事なのは、47人しかいない知事ではなく、
最も数が多い町村議員だ。しかも大半は国会議員の系列。国会議員は
知事の言うことは聞かないが、町村議員の言うことは聞く」
 「分権改革を実現するには政治的パワーが必要。大義名分で国民に
アピールするのも大事だが、最後は政治の問題なのだから、国会議員
を味方に付けることが次のステージでは大切だ」


 ―本年度は地方財政改革が議論になる。
<首長も「正念場」>
 「三位一体改革補助金交付税を削減された結果、首長の中に
分権は損をする改革、と考えている人がいる。本当は削減に見合った
額を税源移譲するのだから損得の改革ではなかったはずだ。財務省
財政危機回避の道具にしてしまった」
 「ポスト小泉は誰がなっても分権改革に対する理解度、情熱は同じ
ではないか。であるならば、地方が国に切り込むには国民を巻き込む
戦略しかない。首長にとっても正念場。闘うポジションを与えられている
のだから、しっかり理論武装して行動してほしい」


[あさの・しろう]慶大総合政策学部教授、東北大大学院法学研究科
客員教授。旧厚生省課長を経て93年から05年まで宮城県知事を
3期。仙台市出身。東大法学部卒。58歳。
      
                         2006年05月02日火曜日