「平成18年度予算案への『意見表明』」の内容です

3月23日、今開かれている区議会予算委員会において、平成18年度
予算案に対する「意見開陳」(予算案への賛否を含め、最終的な意見を
述べること)を行いました。
 *「意見開陳」の全文は下記に記載


要点は、


1.予算案への賛否
 ①一般会計の予算には反対
  【理由】
   一部の事業予算に対し、自民党が反対の立場から、「予算否決」を
   ちらつかせました(子どもの権利に関する条例)。すると、行政側より、
   「全部執行しなくてもよい」旨の“譲歩”発言がありました。
   言わば、「予算案は出したが、本気でやるつもりはない」と最初から
   言っているようなものです。
   これは、個別の施策への賛否は別として、出された予算案を信頼
   して審議している我々とって、“裏切り行為”にも等しいものと
   言っても過言ではありません。
   行政側にこのような態度が見られる以上、賛成せずに反対。


 ②他の特別会計国民健康保険・老人医療保険介護保険など)
   基本的な方向性と必要性に異論がないので、特別会計という
   限定的な内容であることを考慮して、賛成。     


2.他に指摘した点

 
 1)「地域区民ひろば」について
    *区がめざしている施設の“合理的”(?)活用策。
     http://www.city.toshima.tokyo.jp/hiroba/hiroba01.html


   以下の点から、見切り発車的な制度化に反対。
   ①自主運営の核とされる「運営協議会」(いまだに設立実績なし)
    が、
     ・多くの住民が“公”として認識できるか?
     ・自主運営に向うモチベーションを抱けるか?
    の点で、「本当にできるか」が不明確である。
   ②地域の施設ニーズの実際と区のニーズ把握に乖離がある。


 2)区の文化施策について
    観光・イベント的な視点から文化の「ネタ探し」をするような文化
    施策ではなく、日常生活に密接に関連するテーマに沿い、教育・
    生涯学習に関係させる文化施策へとシフトさせるべきである。
    今のように、生活とかけ離れた芸術などに重点を置くのではなく、
    例えば、世代を超えた「読書自治体」を目標に、多くの区民が
    しっかりした考え方・生活のあり方を身につけることをめざす
    べきである。
    これこそが理想的な「文化自治体」であり、それが全国的に
    拡がれば「文化立国日本」のい新しい形になる。


以下、意見表明の全文です。
 ↓

平成18年度各会計予算に関する私の意見開陳を行います。
結論については、後ほど申し上げます。

 今予算案の審査に当り、私は、各事業における、事業目的の妥当性、事業内容の
有効性、そして有効かつ効率的な事業となるための改善可能性、などの観点から
質疑を行いました。
 その観点からしますと、概ね、私がとりたてて異を唱えるべき内容ではないと
判断しておりますが、今後の区政運営のポイントに関わる部分として、今回の質疑の
中で私が触れた点を踏まえ、2点ほど指摘させていただきます。

 第一に、「地域区民ひろば」について申し上げます。
 これまで、私は、地域区民ひろばは、行政機構のスリム化だけでなく、豊島区の
地域の活性化にも結びつく可能性をもつものと考え、それだからこそ、昨年来、
各委員会等の場で、現行事業への批判も含め、様々な指摘をしてまいりました。
 そして、本格的な事業実施に当っては、慎重の上にも慎重を重ねた検討がなされる
べきとも指摘してまいりました。
 今定例会では、予算案とともに、地域区民ひろばに関する条例も提案されて
おりますが、現段階において、提案された条例に基づく地域区民ひろばの運営が、
本当に地域の活性化・自主的活動の推進に結びつくと言えるどうか、私は大いに
疑問を感じております。
 まず、運営協議会についてです。
 運営協議会については、誰がどのように加わっていつできるかという形式的な
設立の問題もありますが、より本質的な問題が他にあるものと考えます。
 それは、その運営協議会が、その地域の多くの住民から、その地域を代表する
公的な存在としてどう認められていくかという点、そして、組織の中に、自主運営を
志向するモチベーションをどう醸成していくかという点です。
 もちろん、この2点、言葉で言うのは簡単ですが、実際に実現していくのは大変
難しい問題です。私もできるだけ多くの考え方や実例を知るべく努めているところ
です。
 これに関し、今、一部で話題になっている本で、「私のだいじな場所〜公共施設
の市民運営を考える〜」というものがあります。各地の公共施設の市民運営の実態
を調査しまとめたものです。
 この本の内容をもとに、先日複数の執筆者からお話を伺う機会を持ちましたが、
先ほど述べた2点については、地域特性や関連する住民の具体的なあり方によって
様々な違いがあり、当たり前ですが、一律的な制度では割り切れない面があることが、改めて強く認識できました。
 本区の地域区民ひろばの現状を見るとき、運営協議会の形式的な設立もそうですが、
この「公の背負い方」「自主運営を志向するモチベーションのあり方」という2点が
どう備わっていくか、その方向性・道筋が曖昧なままだと私には見えます。
 このような段階で、言わば見切り発車的に制度化に突き進むのは適切とは言えない
と考えます。
 次に、各地域区民ひろばにおける施設配置の問題です。
 今定例会でも幾つかの陳情が出されておりますが、施設ニーズについての区側の
判断と、地域の区民における実際のニーズとの間に、乖離があるのではないかと
考えているのは私だけでしょうか。
 地域の区民の自主的な活動を発展拡大させていくのが地域区民ひろばの本来の姿
であるとするなら、この点についても一層の慎重な検討が必要と考えます。
 以上、地域区民ひろばに関する主要な問題点を述べましたが、これらの問題へ
向けたある程度の方向性が見えない段階での制度化は、単なる「施設の合理化制度」
になってしまう恐れがあるものと、私は危惧します。
 さらに言えば、これまでの地域区民ひろば事業の推進において、責任の地位にある
担当者が短期間で異動してしまうことは、地域との信頼関係を築く上で大いに問題
があるとの、多くの地域の方の声も、充分考慮する必要がある、とも申し上げて
おきます。
 来年度においては、これらを踏まえた再検討が大いに必要と考えます。

 続いて、第二点として、文化施策のあり方について申し上げます。
予算審議の中でも申し上げましたが、私は、自治体の文化施策のあり方としては、
大きく2つのタイプがあるものと考えます。
 第一は、シンボリックなテーマを掲げて、観光・イベントに近い視点から入る
タイプです。
 第二は、日常生活に密接に関連するテーマに沿い、教育・生涯学習などと関連
させていくタイプです。
 一般的に考えて、よほどの文化遺産や文化・観光に関する資源等がその自治体に
ない限り、後者の視点を重視していくのが適切な選択ではないでしょうか。
 そして、豊島区もそのような道をとるべきものと私は考えます
 後者が扱う内容は、日常生活から離れた崇高な芸術などではありません。
 一例として、私が考える文化の姿を申し上げます。
 私が考えるのは、例えば、読書を中心とした文化自治体とでも呼ぶべきものです。
 私は、読み書き計算等を活用した介護予防施策に以前から関わっておりますが、
 その中心である読書は、もちろん、介護予防だけのものではありません。近年、
学校教育において読書が重視されていますが、これを子どもだけではなく、大人も
含めた全ての世代に広げていくような文化づくり・社会づくりをめざしてはいかが
でしょうか。豊島区が区民総出で読書生活を推進し、読書をもとにした古くて新しい
 日本的な文化社会をめざすのです。
 読書により、各個人としては、知識を蓄えて思考力を養い、さらにはしっかりした
生活習慣の確立にも結びつく。そして、それをもとにして他の人間との
コミュニケーションの和を拡げていくこともできる。さらに、その結果として地域の
結びつきが深まって地域の力が増していく。私にはそんな理想の文化自治体が
イメージされます。
 そして、これがさらに拡がり、国民みんなが読書に励み、しっかりした考え方・
生活のあり方の確立を通じて、人間づくり・社会づくりに勤しむような日本に
なっていく。私にはそのような文化立国日本とでも言うべき望ましい社会が脳裏に
浮かんでいます。
 豊島区の文化のあり方として、先に述べた観光・イベントを追う視点が重視されて
いるのではないかと考え、一言述べました。

 以上、予算の中での各論的2点のテーマに触れました。

 さて、総論としての結論を申し上げます。

 本委員会での審議中、一部の委員から、子どもの権利に関する条例についての
反対の立場からの指摘に対し、区側より、予算の執行段階で調整していく旨の答弁
がありました。
 これは非常に重大な発言だと私は考えます。
理事者・職員の方々が非常なエネルギーを費やして練り上げた予算案に対し、それを
最初から円滑に執行しないともとれる姿勢・考え方は、あってはならないものと
考えますし、これでは予算案を信頼して審議している私たちにとって、その信頼が
根本から大きく揺らぐ重大な事態だと私は考えます。
 執行側に、このような不透明な姿勢が、最初から見られるような予算案は、
言わば黒い霧を被った予算と言えます。
 これまで、各年度の予算案に賛成してきた私としましては、行政側がそのような
ことを本気で考えているとは思いたくありません。しかし、「そういうことがない」
ということが明確に示されない現段階においては、このことに目をつぶって
賛成するという訳にはいきません。
 これは、一つの事業予算にとどまることではなく、予算そのものの考え方に関わる
根本的な問題と考えられます。
 以上のような理由から、私は、平成18年度一般会計歳入歳出予算には反対を
いたします。
 なお、4特別会計の歳入歳出予算については、予算案で示された基本的な方向性と
必要性に異論がないこと、特別会計という限定的な内容であること等に鑑み、賛成
いたします。

 最後に、私からの種々の質問・資料要求に対し、迅速かつ誠意をもって対応して
いただきました理事者・職員の方々に心から感謝申し上げます。
 以上をもちまして、私の意見開陳を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。