どう評価する? 「横浜市の新“商法”」

様々な行政施策の展開で知られる横浜市が、他の自治体等からの
「視察」等を有料化するとの“新施策”を発表しましたので、関連記事を
紹介させていただきます。


確かに、「職員などが他の自治体等の視察につき合わされるのは本来的
業務ではない」「独自に考案したノウハウを“タダ”で提供する手はない」
など、それなりに合理的な理由は考えられるので、大いに「一理はある」と
考えます。


ただ、自治体の施策において、「全くオリジナルに考えた施策があるのか」
と言えば、非常に疑問であり、また、そもそも、「自治体は公的存在である」
との考えからすれば、自治体にある種の“請求権”をもつのは、その
自治体の住民に限られるものではないとも言えます。


発表後、賛否両論が沸き起こっているようなので、私も議論の行方を見て
きたいと思います。


でも、「視察者の多さで悲鳴を上げる」ほど注目の集まる自治体が故の、
“贅沢な悩み”とも言えるのではないでしょうか。
「見向きもされない(大部分の)自治体」にとっては、うらやましいかぎりと
と言えます。


以下、記事の内容
  ↓
横浜市>視察1時間半で5000円 「お互いさま」甘い


 視察1時間半で5000円――。横浜市は8日、他の自治体職員や
研究者らによる市の事業の視察、調査を来年度から有料にすると
発表した。従来は「お互いさま」だったが、中田宏市長は「横浜の
ビジネスモデルをただで教えてくれというのは甘い考え」と正当性を
強調する。市によると、行政視察などの有料化は全国初という。


 有料化するのは、家庭ごみの30%削減を目指す「G30」、休日にも
市政全般の問い合わせに対応するコールセンター設置など25事業。


 職員から説明を受け現場を見学する視察は1人1回、1時間半で
5000円を「人件費や資料代」として請求し、視察者が1人増えるごとに
1000円を追加徴収する。1時間延長すれば人数に関係なく2000円の
追加料金もかかる。事業内容の書面照会などは50項目以内で3000円、
10項目増えるごとに1000円追加となる。対象は他の自治体職員や
議員、研究者。横浜市民と報道機関は含まない。


 市によると、25事業に関する今年度の視察・調査は約600件。一部の
事業には視察が殺到し、業務に支障をきたしていた。有料化した25
事業の中には札幌市を参考にしたコールセンターなど他自治体の
イデアを取り入れた例もあるが、市は「職員が努力して生み出す
ノウハウには税金がかかっている。それを無料で他都市に横流しする
のは健全ではない」と説明している。【堀智行】


 ◇蓄えるものでない 
 ▽神野(じん・の)直彦・東京大教授(財政学)の話 
   知識というものは人間社会の発展のために惜しみなく与えるもので
蓄えるものではない。自治体の政策は他の市や国にとって政策実験的
な意味合いもある。横浜市は企業ではない。他の市や国とアイデア
を分かち合い、共に高めあえば横浜市民のためにもなる。有料で独自
のノウハウを教えるのならば、横浜市もアイデアを借りた所に料金を
払わなくてはならなくなる。    
                    (毎日新聞) - 3月8日23時17分更新