「首長のあり方」と「自治体のかたち」について

 最近、自治体の首長・首長経験者のお話を続けて伺う機会を得ました。

 1)11/18(金) 内閣府等の主催による「国・地方の行革コンペ」

 2)11/21(月) 行政経営フォーラム(http://www.pm-forum.org/
        からのご案内による
        「前佐賀市長 木下敏之氏を囲む会」
 

 1)は、増田(岩手)・太田(大阪)・古川(佐賀)の3知事と
森(高浜)・熊坂(宮古)の2市長が出席された、講演会兼
パネルディスカッションのようなものです。

 2)は10人程度が参加してのフリーディスカッションに近いものでした。

 
 以下は私の感想(発言の内容を私なりに咀嚼した上で考えたこと)です。
 
 1)について
   「やり手」とされる知事・市長の実践のお話は非常に興味深い
  ものでした。
   ただ、今回新たに発見したのは、「行革」はやはり住民にとっては
  どう転んでも“痛み”であり(当たり前ですが)、これを進めるには、
  何らかの“カムフラージュ”が必要だということです。
   この“カムフラージュ”に活用されているのが、最近流行の「PPP」
  「新しい公(おおやけ)」「住民との協働」といった一連の概念
  のようです。
   つまり、行革で役所の仕事を削る必要がありますが、その削った
  分を誰かが肩代わりしないと自治体経営は成り立たないのであり、
  肩代わりを住民にお願いする時に、「肩代わり」とは言わずに、
  「新しい世界」としての「PPP」等を提示する、このようなものだと
  理解しました。
   そして、これらの概念はおそらくほとんどの自治体で唱えられている
  はずですが、これを標榜する首長には、大きく分けて2つのタイプが
  あるのではないかと考えるようになりました。
   ①文字通りの“カムフラージュ”だけで終わってしまうタイプ
   ②“カムフラージュ”を意識しながら、一歩進めて、本当に住民
    を巻き込んでの社会づくりをめざすタイプ
  
   もちろん、めざすべきなのは②であり、①の首長は、どんなに
  素晴らしい言葉を並べても、そのやることは、他の自治体の
  「猿まね」にしかならないのでしょう。
   そして、「猿まね」首長の下にある職員は、首長に気に入られようと
  これまた他の自治体の新しい施策を表面だけ「猿まね」しようとする
  (大部分の職員にとっては、役人の性として、トップに評価される
  ことが第一義でしょうから)、このような悪循環が続くのではないか
  と思います。


 2)について
   先進的な施策の展開で著名な木下前市長のお話は期待にたがわぬもの
  でした。
   ただ、考えさせられたのは、改革を進めながら選挙に勝つことの難しさ
  です(これも当たり前のことですが)。
   ディスカッションの中で、
  「改革の利益は薄く広く広がってしまうので、なかなか人には自覚
   されない。しかし、改革の痛みは、どんなに小さなものであっても
   その対象となった人にははっきりと自覚される」
  という趣旨の言葉がありましたが、まさにその点に難しさがあり、
  「選挙に負けないため」に思い切った改革を避けてきたのが
  これまでの大部分の首長なのでしょう。
   その意味で、佐賀市で展開された諸施策の内容もさることながら、
  勇気をもってリスクを負った木下氏の姿勢に大いに感銘を受けた
  次第です。


 当然のことですが、「首長がどんな人間か?」によって、自治体のかたち
は決まってしまいます。
 もちろん、首長が何もしなくても役所は動いていくのでしょうが、それは
惰性の動きでしかありません。
 自治体を「よい方向へ」「大きく」動かしてかたちを変えていくには、
やはり首長がポイントなのだと改めて考えさせられました。