日本に新たな雇用を生むには?(2/18、NHK「週間ニュース深読み」から

今朝、NHKの「週間ニュース深読み」を見ていました。


今日の主要テーマは、昨年の電気メーカー等の赤字などに関連させて、日本の雇用問題。
最初は別な仕事をしながら何気なく見ていましたが、藻谷浩介氏が話し出したあたりから、
“身を乗り出して”見始めました。


日本の雇用問題を語るゲストは、藻谷氏の他、野口悠紀雄氏。
お二人がそれぞれの「日本における雇用拡大策」について述べられていて、なるほどと考えさせられながら
聴いていたのですが、興味深かかったのは、お二人の主張の背後にあるものの見方・考え方の方向性の
違いという点です。


「雇用増大の“秘策”として何をすべきか?」に対し、野口氏は、外国から意欲・能力に溢れた人材を入れる
ことが大事との主張。
これにより、今の日本の製造業の体質が変わり、世界で戦える地位に復帰するだけでなく、その“再繁栄”した
企業の周りで関連産業が栄えるなどの波及効果が生まれ、それによって雇用が拡大されるとのこと。
さらに、このやり方は、過去にアメリカのシリコンバレーやイギリスでの成功例があるとの説明。


これに対し(これはあくまで番組があえて“違いを際立たせ”ようとしたのでしょうが)、藻谷氏は、
「今の日本の地方の中で何ができるか?」の立場から(と、私は理解しました)、農業を法人化するなどして
“企業経営”にし、たとえ小さくても地方にそのような“企業”がたくさん生れてくれば、“勤め人”として
就農する人間が増え、雇用が増えるとの説明。


時々、お二人の間で「どちらが効果的か?」で議論が白熱しそうになり(特に、「野口氏→藻谷氏」の方向で)、
見ている私は面白かったのですが、この二つの考え方の違いの原点まであえて考えたとき、「演繹 VS 帰納
とも言うべき違いが感じられて、一層面白く感じられました。
私の中での定義は、誤解を恐れずに言うと、
 演繹:野口氏
   外国の成功例をモデルとし、だから日本もそうやれば成功するだろうとの“理論”を主張。
 帰納:藻谷氏
   日本における現実の成功例から「普遍化可能なもの」を抽出し(きっと他にもこの種のものを考えて
   いらっしゃる様子)、成功の確率の高いものとして主張。
となります。


「学者 VS 現場」という言い古された表現は使いたくないのですが、考え方の原点というところまで
遡ると、ある意味これに似た違いがあるのではないでしょうか?
特に藻谷氏については、「デフレの正体」という著書を何度も読んだだけでなく、昨年は私が主催者となって
講演会を開くなど、何度も直接お話を伺う機会があり、数多くの現実に当たった上で主張を構築・展開されて
いることがよくわかっていたので(少なくとも、「そのつもり」ではあります)、このような“比較”に考え
が及んだのだと思います。


今日の番組を見た上での私の結論は、ありきたりですが、「やれることはまずやらねば!」ということで、
どちらの“策”も並行してどんどん進めるべきだと思います。


ところでもう一つ。
今日のお話を伺う限りでは、もし藻谷氏が野口氏の主張をしなければならない立場(?)になった場合でも、
きっと今日以上に説得力のある議論を展開されるのではないか、と思いました。
ということで、改めて藻谷浩介氏の“凄み”に気づかされた思いです。