図書館のあり方 −千代田図書館から考える−

先日、行政経営フォーラム(http://www.pm-forum.org/)の有志が企画した
千代田図書館見学ツアー」に参加してきました。


同図書館は現在最も話題の図書館であり、この機会を通じて、図書館のあり方に
ついて大いに考えさせられました。
このツアー以外の“個人的な”情報収集も踏まえ、以下に感想等を記します。


1.「よい図書館」とは何か?

  従来、「よい図書館」の指標として挙げられていた点といえば、
   ・貸出し冊数が多い
   ・来館者が多い
  ぐらいでしょうか。
  でも、この2つの数字を極力上げようとすれば、
   ・より多くの人が読みたがるベストセラー等に特化した品揃えとする
    (しかも同一の「人気本」を数多く)
   ・とにかく人を来させる(本来の図書館利用に限らず)
  などとなってしまい、図書館本来の文化的な姿からかけ離れてしまう恐れがあります。
  同図書館も上記2つの指標を基本的に追いかけていますが、ベストセラー本の購入を
最大1冊とするなど、従来の図書館の「人気取り競争」とは一線を画しています。
    「よい図書館」=「知識・情報を得る場」
  という明確なコンセプトの必要性を改めて感じました。


2.「よい図書館」は「よい利用者」から生まれる!
  行ってみてまず感じたのは、「雰囲気のよい図書館」だということです。
  これは決して建物が新しいからばかりではありません。
  来館者のもつ“雰囲気”によります(これを感じたのは私ばかりではありません)。
  どこの図書館でも問題になるホームレスの方々への対策など、ここでは雰囲気維持
のための様々な対策が講じられているようです。
  また、会費制の「サポーターズクラブ制度」もこの目的の一環のようです。

     図書館のあり方に関心がある・よくしたい
            ↓
     会費を払って(まで?)「サポーター」になる
            ↓
     「サポーター」になると、より利用頻度が増す
(=“質”のよい利用者の割合が増える)
            ↓
     図書館の雰囲気がよくなり、新たに「サポーター」が増える
            ↓
     図書館の雰囲気が一層よくなる
  
   こんな好循環を狙っているように感じられました。   


3.図書館の民営化のあり方とは?
  上記以外にも、
    ・コンシェルジェ
    ・神田古書店街との提携
    ・新品図書購入案内サービス
  など、ここでは様々なユニークなアイデアが実践されています。
  これらのアイデアはおそらく「行政の運営」の中からは生まれにくいでしょう。
  この図書館は、「民間の知恵」を極めてうまく発揮させた“作品”と呼んでも
よいと思います。
  *もっとも、民間に任せるに当り、「効率一辺倒」「安かろう悪かろう」にならない
よう、区側によるきちんとした指標の設定が重要であることは言うまでもありませんが。


4.「図書館 VS 書店」から「図書館と書店の共存」へ
  一般に、図書館に対しては「無料の貸し本屋だ!」という批判があります。
  同一のベストセラー本を何十冊も揃えるなどして、書籍の購買を“妨害”することなどに
対しての批判です。
  この点、ここでは、
   ・ベストセラーの購入は1冊とする。
   ・ビジネス関連書籍(ここでは人気のコーナー)は貸出ししない。
  など、“配慮”がなされています。
    「一刻も早く希望の本を読みたい人」
    「希望の本をいつでも手元に置いておきたい人」
  は、自身で購入すればよいのであり、その欲求まで図書館が「面倒を見る」必要はないと
考えます。

  ここでは、さらに、「新刊図書購入紹介サービス」として、購入の欲求をその場で書店の
ビジネスにつなげる試みがなされており、「書店との共存」が一層図られています。

  このサービス、購入先の書店を、「街なかの商店街の書店」などと絞れば、商店街活性化策
の一環にもなるものと考えます。