自治体破綻法制−首長・議会の責任は?

今、様々な場で議論されている「自治体破綻法制」について。


「そもそも自治体に『破綻』などありえない」という考えから反対もしく
は疑問を唱える意見があります。
 ・自治体には強制的に収入を得ることのできる「徴税権」があるから、
  いざとなればこれをどんどん活用し(=住民への課税の拡大)、
  いわゆる“資金ショート”を制度的に防げるはず。
 ・自治体は、民間企業と違った「住民への公的な役割をもった存在」
  だから、“潰す”ことなどありえない(=仮に潰せば、自治体の
  “恩恵”を受けられない国民が生まれることになる)。
 ・話題の夕張市にしても、貸し手である金融機関に債権放棄や圧縮
  を求めることにはならないので、民間のような“破綻”とは言えない。
といったところが主な論拠でしょうか。


夕張市については、鳥取県の片山知事が、「200年ぐらいの繰り延べ
返済にするなら、スムーズな返済が可能」との見方も示しており、上記
の見方の“補強”(?)をしているとも言えます。


でも、私は、やはり何らかの形の“強制介入”とも言うべき、仕組みが
必要だと思います(それを“破綻”と名づけるかどうかは別として)。
ある自治体の財政状態が、行政側の舵取りの誤りによって、不自然に
悪化した場合、地方交付税補助金等を通して、その自治体に「外部
からの金」(=国のカネ等)が入っている以上、「使わなくてもよい
カネが使われた」という意味で、自治体の外の人間も責任が追及
できるし、そうすべきと考えるからです。


さて、現在、強制介入の発動基準や自治体に課される制限内容に
ついての議論は盛んですが、首長・議会(議員)の責任をどう制度上
に組み入れるかについての議論はあまり聞かないので、私なりに
考えてみました。
ただ、詳細な検証等まではしていないので、現段階では単なる
“アイデア”です。


1.首長の責任とペナルティー
 もちろん最大の責任があると言えますが、「首長の支持基盤」の
あり方によって、「自治体の責任」については、下のように差をつけて
もよいのではないでしょうか。
 但し、首長へのペナルティーは、「一定期間の公職就任権剥奪」
など、必ず課されるべきです。
 

①「首長がミスリード。圧倒的な住民の支持を得ていた」場合
  多くの住民が「そんな首長のやり方を認めていた」ことになるので、
 住民も含めた「自治体の責任」は重いと考えられます。
  従って、多少の住民自治の制限も含め、国のコントロールの度合い
 を大きくしてもよいでしょう。


②「首長がミスリード。住民の支持が小さかった」場合 
  ①と逆に、「住民の良識」を考慮し、住民の自治権・チェック権を
 認める方がよいと考えます(重要案件への住民投票の義務化など)。


2.議会・議員の責任とペナルティー
 ある自治体が“破綻”に至った場合、当然議会にも責任が生じますが、
同じ議員でも、首長との関係によって、分けて考えることもできると思い
ます。


 ①首長に対して「与党」の議員の場合
   これは非常に責任が重いと言うべきです。一般的に、与党を公言
  している議員ほど、「放漫財政のおこぼれを頂戴している」はず
  ですから、首長と同罪と考えて、1.と同様、公職からの追放等は
  当然と考えます。


 ②首長に対して「野党」の議員の場合
   ①よりも責任・ペナルティーは軽いと考えてよいと思います。
   ただ、同じ野党と言っても、実質の機能がない場合もあるので、
  首長提案の議案への賛成率等で“ランク分け”を行ってもよいかも
  しれません。


ついでに言うと、議会が“形骸化”する原因の一つは、「与党志向」に
あると考えます。
自らはあまり判断・思考をせずに、首長の単なる追認だけをやることで、
首長からのおこぼれを頂戴してそれを自分の力と見せかける。
“破綻”自治体からは少なくともこのような風潮を一掃しなければなり
ませんから、与党だけでなく、それをつくり出すもとになる「会派」も
一掃した方がよいでしょう。
「議員の徒党禁止条例」みたいなものを設ければ、新しく選ばれる
議員は、否応なく自らの頭で考えるようになるはずです。


そこまでしても、「ろくな議員はいない」自治体議会については、強制的
に国や都道府県から人を議員として送り込み、その自治体の雰囲気や
レベルを強引に変えてしまうことも考えられます。
議決権についても、プロパー議員が1人1票に対し、「外部議員」は1人
2〜3票とすれば、議会は全く変わると思います。


以上は、自治体改革に向けた「私案のさきがけ」とでも言うべきものです。