「ふるさと納税」をどう考える?
最近話題の「ふるさと納税」についてコメントします。
この議論、最近になって急に出てきたものではないはずです。
豊島区議会議員になって以来、どちらかと言うと、各自治体の議員よりも
(地方の)首長の立場の方々のお話を伺う機会が多かった私ですが、その中
では、「高校までは地方の我々が育てたのに、いざ税金を払う年代になると
都市(東京?)に行ってしまう。これはどう考えても不合理だ」という意見
はたびたび聞かされていました。
しかも、このような意見を述べる方々が「意欲・能力の面で優れた首長」の
場合、説得力をもちます。
単に、「何でもいいから財源だけが欲しい」という「どうでもいい首長」の
意見ではないのですから。
このような背景も含め、私の結論としては、「ふるさと納税」という言葉は
別にして、「都市から地方への“何らかの形”での財源移転」は必要と考え
ます。
ただそれは、現在一部で唱えられているような「機械的(強制的?)な財源
移転」ではなく、次のような形がよいものと現時点では考えています。
1.結論
都市から地方への財源移転は、「地方自治体への寄付の仕組みの充実・拡大」
によって行う。
例えば、都市に住んでいる人間が、地方のある自治体の施策に魅力を感じた
場合に、その人間の「トータルな収支にマイナスにならない」形で、自由に
寄付を行える仕組みをつくり、その仕組みの中で、寄付金市場の拡大(=地方
への財源移転の拡大)をめざす。
*このような寄付金の活用については、次のような提言もしています。
http://www.hino-katsuaki.com/polycy/polycy06.html
2.この場合の「寄付税制」の概要
①「自治体への寄付」をした場合は、現状の所得控除ではなく、税額控除と
する。
⇒寄付をした分だけ税金がまるまる安くなる。
②寄付の相手先(=寄付できる自治体)は限定しない。
⇒「ふるさと」に関わらず、魅力を感じた自治体にはどこでも寄付が可能
③寄付分の税額控除の対象は、住民税ではなく、所得税とする。
⇒「寄付の分だけ減る税収」の負担は、地方が負うのではなく、国が負う
3.この仕組みのメリット
①「税の強制的移転」ではなく、都市に住む人間の自由意志に任せた移転のため、
「地方が努力をする」(=魅力ある政策・実績等をアピールする)ことが
なければ、税の移転は生じない。
このため、「地方自治体がより“がんばる”」ようになる。
②相手先の限定がないため、寄付者にとっては、自由に「魅力ある自治体」を
選択できる(現住地が最もよいとなれば、寄付しなくてもよい)。
③寄付が行われた場合の、“減収先"(=入ってくる税金が減る対象)を国として
いるため、少なくとも現状の全国の自治体の収支を大きく混乱させることは
ない。
国は図体が大きい分だけ、ムダも多いので、この分は国に吸収してもらう。
*ちょっと飛躍した考えかもしれませんが、この「寄付による減収分」を、
「国と地方との分捕り合戦の戦場」にするのも面白いかもしれません。
国の政策等に魅力を感じている場合は寄付をせずにその分が国税となる
訳ですから、「地方自治体間の競争」だけでなく、「地方と国の競争」と
いった図式もできれば、納税者にはより選択の余地が拡がるとも言えます。
以上が現時点での取りあえずのコメントになります。