介護保険に「成功報酬」の導入!?

従来から私は、介護給付・介護費用の抑制のため、介護保険制度に
インセンティブの仕組みを導入するべきと主張してきました。
 *日野の主張
   ①「構造改革特区」第4次提案の内容
    http://www.hino-katsuaki.com/polycy/polycy03.html
②「構造改革特区」第5次提案の内容
    http://www.hino-katsuaki.com/polycy/polycy04.html
   ③「構造改革特区」第6次提案の内容
    http://www.hino-katsuaki.com/polycy/polycy05.html

8月末に新聞報道で伝えられた「介護予防に成功報酬」の件で、
10月12日の日経新聞5面により詳細な内容が載っていました。
(他の新聞には載っていないようです。

[記事内容の概略]

  ①厚生労働省は、来年4月から始まる介護予防サービスについて、
   事業者に支払う報酬を成果に応じて上乗せする。
   (=介護予防の効果を出した事業者ほど報酬面での優遇措置が
     得られる)
  
  ②3〜6ヶ月間で要介護度の改善・維持が見られた場合、介護報酬
   の支払いに、最大で2倍の差をつける。
   (=“優良”な事業者には、最大で倍の報酬を支給する)

  ③具体的な対象は、筋力トレーニング・栄養改善・歯のケア。

  ④利用者の負担は当該事業者の報酬に比例する。つまり、倍の
   報酬が得られる“優良”な事業者のサービスを受けた場合、
   同じサービスを他の事業者(“優良”ではない事業者)から受けた
   場合と比較すると、負担は倍になる。
   *利用者の「1割負担」は変わらないため、報酬が加算される
    ほど利用者負担も大きくなる。

成功報酬自体は望ましいものと考えますが、問題は④です。
よい事業者を選ぶことで負担が大きくなるのであれば、果たして
そのような選択をするでしょうか。

おそらく、成功報酬分の介護保険財政の膨らみを利用者の負担で
解消するのが狙いでしょう。

しかし、そもそも
a)お金を払ってでも身体を丈夫にしたいという人(この制度案において、
 ④にもかかわらず、優良事業者を選ぶ人)は、もともとそのようなライフ
 スタイルを送っているはずなので(健康に気を遣って運動したり、各種の
 ケアを選ぶ)、要介護状態になりにくいと言えるのではないか。
b)要介護状態になる人は、どちらかと言うとa)とは違うタイプの人
 と言えるので、この制度案のように、あえて自己負担の大きくなるような
 事業者を選択しないのではないか。

以上から、この厚生労働省の「試案」はうまく回らないのではないかと
考えています。

これからこの「試案」がどう変わっていくか、注視していくつもりです。